きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

490. 優勝を起点とした大関昇進

大相撲夏場所まで残り1週間である。

先場所途中休場した照ノ富士、初優勝を果たした若隆景辺りが焦点になると思うが、本日は若隆景について触れていこうと思う。

先場所は壮絶な優勝決定戦の末、見事初優勝を果たした。

新関脇の優勝は年6場所制となった昭和33年以降史上初である。

また以前こちらでも記載したが、新関脇で12勝以上を果たした力士は全員大関以上へ昇進を果たしているため、若隆景が注目されるのも無理はないだろう。

2場所前の番付は東前頭筆頭であり、9勝6敗の成績だった。

10勝以上していれば平幕だとしても大関への起点場所になる可能性も秘めていたが、9勝ではおそらく起点とならず、先場所の12勝が起点となるだろう(今場所も優勝となれば話は変わるかもしれないが)。

過去に優勝場所が起点となり、大関へ昇進を果たした力士はどのような成績を残しているのだろうか。

以下に詳細をまとめた。

四股名

1場所目

2場所目

3場所目

合計

輪島

12勝3敗(優勝)

8勝7敗

13勝2敗(次点)

33勝12敗

魁傑(2回目)

14勝1敗(優勝)※

11勝4敗

11勝4敗

36勝9敗

保志

13勝2敗(優勝)

11勝4敗

12勝3敗

36勝9敗

貴花田

14勝1敗(優勝)

10勝5敗

11勝4敗

35勝10敗

若花田(若ノ花)

14勝1敗(優勝)

10勝5敗

13勝2敗(同点)

37勝8敗

栃ノ心

14勝1敗(優勝)※

10勝5敗

13勝2敗(次点)

37勝8敗

貴景勝

13勝2敗(優勝)

11勝4敗(次点)

10勝5敗

34勝11敗

※は平幕

四股名は当時

 

魁傑、栃ノ心は平幕優勝だったが、上位圏内ということもあり、それが評価されて起点場所となっている(厳密に言えば魁傑は上位圏外だが上位との割はしっかり組まれている)。

過去7名の結果を見ると、3場所合計白星が比較的高い傾向にある。

若花田、栃ノ心は歴代最多タイの37勝であり、魁傑、北勝海も36勝である。

上記の新関脇で12勝した力士が大関以上へ昇進も考慮すると、ますます若隆景に期待したくなるだろう。

これとは逆に、上位圏内で優勝を果たしながら大関昇進を果たせなかった力士も存在する。

詳細は以下の通りである。

四股名

1場所目(優勝)

2場所目

3場所目

合計

長谷川

12勝3敗(関脇)

8勝7敗

5勝10敗

 

金剛

13勝2敗(筆頭)

6勝9敗

 

 

琴錦

13勝2敗(5枚目)

12勝3敗

7勝8敗

 

貴花田

14勝1敗(2枚目)

5勝10敗

 

 

水戸泉

13勝2敗(筆頭)

8勝7敗

1勝12敗2休

 

琴光喜

13勝2敗(2枚目)

9勝6敗

12勝3敗

34勝11敗

御嶽海

13勝2敗(関脇)

9勝6敗

7勝8敗

 

玉鷲

13勝2敗(関脇)

5勝10敗

 

 

御嶽海

12勝3敗(関脇)

6勝9敗

 

 

大栄翔

13勝2敗(筆頭)

8勝7敗

6勝9敗

 

長谷川は優勝を果たした前場所に10勝5敗の成績を挙げており、当時の大関昇進基準が『30勝前後』だったため、優勝を果たした時点で昇進の可能性も秘めていたが、昇進を果たすことはなかった。

その後も結果として大関昇進を果たせず、歴代でも『最強関脇』と名高い存在となった。

琴錦は優勝した翌場所に小結へ復帰し、14日目終了時点で12勝2敗とし、小錦と並走していた。

もしこの場所で連覇を果たせば『関脇を飛び越えて大関昇進』という声も上がっていたが、千秋楽敗れてしまい、小錦が優勝を果たしたため大関昇進を果たせなかった。

翌場所は負け越しを喫し、その後も大関昇進を果たすことが出来なかったため、長谷川同様『最強関脇』と名高い存在となった。

琴光喜はこの中で唯一3場所勝ち越し、さらにはいわゆる昇進の目安と言われる『33勝以上』の成績を残したが、優勝した場所が平幕であること、2場所目が1桁だったこと、3場所目が終盤戦平幕力士に黒星を喫したこと等が挙げられ昇進を果たせなかった。

琴光喜はこの後低迷することになるが、5年後に遅咲ながら大関昇進を果たした。

御嶽海はご存じ(?)の通り、優勝を果たしながらも翌場所1桁勝ち越しに終わる、もしくは負け越しを喫するなど、安定感に欠けていたため中々大関昇進を果たすことが出来なかった。

しかしようやく今年念願の大関昇進を果たした。

上記表を見てもわかるように、優勝した翌場所に二桁勝利を挙げなければ昇進できないと言っても過言ではないだろう。

唯一輪島だけ昇進を果たしており、琴光喜の成績でも現在ならば昇進の可能性は十分あると思うが、印象を良くするためには最低でも10勝はほしいところだろう。

先場所の相撲を見て、若隆景は巧さだけでなく、力強さも兼ね備えていた。

今場所は確実に警戒されるだろうが、その中で二桁勝利を挙げることが出来るかどうか注目である。

489. 2022年大相撲夏場所番付発表

4月に突入してから投稿をサボっていたが、久しぶりに投稿しようと思う。

本日4月25日、大相撲夏場所の番付発表日である。

先場所から始めたことではあるが、今場所も答え合わせをしてみたいと思う。

私の予想と実際の番付は以下の通りである。

番付 西
照ノ富士 横綱  
御嶽海 大関 正代
  大関 貴景勝
若隆景 関脇 阿炎
豊昇龍 小結 大栄翔
霧馬山(高安) 前頭筆頭 逸ノ城
高安(霧馬山) 前頭2枚目 琴ノ若
遠藤(北勝富士 前頭3枚目 玉鷲
北勝富士(遠藤) 前頭4枚目 隆の勝
阿武咲 前頭5枚目 翔猿
若元春(宇良) 前頭6枚目 宇良(若元春)
宝富士 前頭7枚目 志摩ノ海(琴恵光)
琴恵光(志摩ノ海) 前頭8枚目 照強
琴勝峰 前頭9枚目 栃ノ心
錦木(隠岐の海 前頭10枚目 隠岐の海(錦木)
碧山 前頭11枚目 妙義龍(千代翔馬
千代翔馬(妙義龍) 前頭12枚目 佐田の海
明生(千代大龍 前頭13枚目 千代大龍(明生)
石浦(王鵬) 前頭14枚目 一山本(豊山
豊山(東龍) 前頭15枚目 王鵬(一山本)
東龍(石浦 前頭16枚目 翠富士
千代丸(荒篤山) 前頭17枚目 荒篤山(輝)

※()がなければ正解であり、()があればそれが結果

 

まず前頭筆頭、2枚目に関してだが、私自身は上位圏外で12勝した高安よりも上位圏内で10勝した霧馬山が上と予想したのだが、役力士と十分に対戦し、優勝決定戦まで出場したことも踏まえると高安の方が優勢だったというところか。

2枚目で9勝した逸ノ城を動かさないわけにもいかないし、結果として霧馬山が2枚目に留まるのは番付運に泣かされたといったところか。

北勝富士、遠藤辺りも予想する上で意見の分かれるところではあると思うが、私の予想とは逆に西前頭4枚目で8勝した遠藤よりも、東前頭6枚目で9勝した北勝富士を優先する形となった。

その他を見ても東西逆の結果が大半であるのだが、予想外だったのが幕内に残留したのが千代丸ではなく輝という点か。

東前頭13枚目で5勝10敗の千代丸、東前頭17枚目で7勝8敗の輝。

単純計算でも千代丸優勢かと思われたのだが、まさかの結果だった。

輝はいわゆる幕尻で7勝8敗であり、下に半枚あるとはいえ、十両陥落やむなしの成績であることは間違いなく、また十両力士にも2戦2敗である。

一方千代丸は十両との対戦は組まれていない。

また千代丸と輝の直接対決は千代丸が勝利している。

細かな点を考慮しても千代丸優勢だとは思うのだが、結果として輝が幕内残留し、千代丸が十両陥落となった。

これが番付予想の難しいところである。

ただの答え合わせに過ぎないのだが、改めて番付予想の難しさを体感したような気がする。

488. 上位圏内に在位し続ける関脇以下

春場所が終了した時点で『次の大関候補は誰か?』と問われたら『若隆景』と答えるファンは多いだろう。

それほど今場所の若隆景の相撲は巧さと力強さを兼ね備えた相撲であった。

しかし春場所前ならば、評価としては平幕で2場所連続12勝の阿炎の方が上だったと思うし、また明生、隆の勝の2名も若隆景と同格の力量を持った力士と言えただろう。

しかし若隆景が優勝した一方、阿炎は終盤戦上位と割を外された中で8勝、隆の勝は4勝、明生に至っては1勝という大不振で終えたため、今場所だけでかなりの差が生じてしまったように感じた。

若隆景は今場所の優勝だけに目が行きがちだが、そもそもここ1年、常に上位圏内で相撲を取り続けていた。

同じように関脇以下の上位圏内に在位する力士はどのくらい存在しただろうか。

またその力士達の成績は如何なものだっただろうか。

場所によって横綱大関の人数、同部屋の関係等で上位圏内の枚数にも変動があるのだが、今回は『5枚目以内』を上位圏内の定義とした。

その中で、ここ1年で4場所以上上位圏内に在位した力士は『11名』である。

これが多いのか少ないのかは不明だが、以下に成績の詳細をまとめた。

四股名 上位圏内場所数 上位圏内1年の成績 上位戦成績 勝ち越し数(二桁) 三役在位数
若隆景 6場所 52勝38敗(0.578 4勝15敗(0.211)
横綱:0勝4敗(0.000)
大関:4勝11敗(0.267)
5場所
(1場所)
2場所
大栄翔 6場所 44勝46敗(0.489) 6勝14敗(0.3)
横綱2勝3敗(0.4)
大関:4勝11敗(0.267)
3場所
(1場所)
2場所
隆の勝 6場所 42勝48敗(0.467) 3勝11敗(0.214)
横綱:0勝4敗(0.000)
大関:3勝7敗(0.3)
2場所
(1場所)
3場所
明生 6場所 37勝53敗(0.411) 7勝13敗(0.350)
横綱2勝2敗(0.5
大関:5(1)勝11敗(0.313)
3場所
(0場所)
4場所
逸ノ城 5場所 40勝35敗(0.533) 7勝9敗(0.438
横綱:0勝5敗(0.000)
大関7勝4敗(0.636
4場所
(1場所)
2場所
豊昇龍 5場所 37勝36敗2休(0.507) 6勝9敗(0.4)
横綱:0勝3敗(0.000)
大関:6勝6敗(0.5)
2場所
(1場所)
1場所
霧馬山 5場所 37勝38敗(0.493) 5勝11敗(0.313)
横綱:0勝3敗(0.000)
大関:5(1)勝8敗(0.385)
2場所
(1場所)
1場所
阿武咲 4場所 28勝32敗(0.467) 3勝12敗(0.2)
横綱:1(1)勝2敗(0.333)
大関:2勝10敗(0.167)
1場所
(1場所)
0場所
高安 4場所 27勝28敗5休(0.491) 4勝12敗(0.250)
横綱:0勝3敗(0.000)
大関:4勝9敗(0.308)
1場所
(1場所)
3場所
遠藤 4場所 24勝26敗10休(0.480) 5勝8敗(0.385)
横綱:0勝3敗(0.000)
大関:5勝5敗(0.5)
2場所
(0場所)
0場所
北勝富士 4場所 22勝28敗10休(0.440) 2勝11敗(0.154)
横綱:0勝3敗(0.000)
大関:2勝8敗(0.2)
1場所
(0場所)
0場所
阿炎 1場所 8勝7敗 2勝2敗(0.5)
横綱:1勝1敗(0.5)
大関:1勝1敗(0.5)
1場所
(0場所)
1場所

※赤字はその項目の最高成績

阿炎の上位圏内は今場所だけだが、参考までに入れてみた。

ここ1年以内の前頭5枚目以内の成績だが、上位戦の成績に関しては上位圏内の地位に在位しなくても、その場所で対戦があれば含めている。

例を挙げれば今場所高安は前頭7枚目で上位圏外であるが、3大関との対戦があったため、上位戦2勝1敗は計算に含めている。

この表を見ると、1年間全て上位圏内に在位した力士は若隆景、大栄翔、隆の勝、明生の4名である。

冒頭では大栄翔について触れていなかったが、やはりここらが同格なのは納得できる。

多くの力士は1年間の成績で黒星の方が多いのに対し、若隆景と逸ノ城は白星が多い結果となっている。

若隆景は年5場所勝ち越しも果たしているため、仮に春場所が一桁勝ち越しに終わっていたとしても、この1年間は白星が多い結果となっていた。

これを見てもわかるように、若隆景の安定感は他の力士と比較して群を抜いていると言っても過言ではないかもしれない。

しかし上位戦の成績に目を向けると若隆景は0.211であり、下から3番目と低順位である。

横綱戦においては未勝利である。

一方この項目で輝きを放つのが逸ノ城である。

逸ノ城横綱戦こそ惨敗だが、大関戦は7勝4敗と勝ち越している。

正代を得意としており、ここ数場所は貴景勝にも強いため、それが要因と言える。

明生、大栄翔辺りは横綱戦で健闘しており、五分近くの成績を残している。

総合すると若隆景だが、爆発力を秘めた明生、大栄翔、そして大関に強くちゃっかり(?)上位圏内で勝ち越しの多い逸ノ城と言ったところか。

豊昇龍、霧馬山辺りは大関戦で健闘しているが、横綱戦に完敗している結果である。

中堅の遠藤、北勝富士は休場していた影響もあるが、ここ数場所上位戦では苦戦している様子である(とはいえ遠藤は今場所勝ち越したが)。

阿武咲は中位以上上位未満といった力量であり、5~6枚目辺りならば勝ち越せるが、3枚目以内になると負け越すことが多く、中々上位定着が難しいところである。

高安が今場所上位圏外とはいえ、3大関とは総当たりして結果を残したため、来場所上位圏内で結果を残せるかどうか。

そして阿炎は今場所新関脇で勝ち越したとはいえ、終盤戦上位との割を崩され、大関戦は御嶽海戦だけに留まった。

何なら上位圏外だったここ2場所の方が上位戦が多かったレベルである。

若隆景に話を戻すと、この中では間違いなく最高の安定感であり、結果を残していると言える。

しかしさらに上を目指すならば横綱戦がカギとなるだろう。

それは逸ノ城にも同じことが言えるか。

明生、大栄翔の場合は同格相手に勝ち切ることが出来るかどうかがカギとなるだろう。

そして阿炎はこの先どうなるか注目である。

誰が次の大関となるのか。

私も今場所を見たら若隆景が第一候補だが、2番手には豊昇龍の名前を挙げておこう。

はてさて…

487. 新関脇で12勝以上

春場所で見事初優勝を果たした若隆景。

新関脇優勝は双葉山以来86年ぶり、15日制度以降では史上初である。

新関脇優勝ばかりに注目が集まるのは無理のない事であるが、そもそも新関脇で12勝以上の成績を挙げたことも珍しい出来事である。

年6場所制となった昭和33年以降、新関脇で12勝以上は今回で『5回目』である。

詳細については以下の通りである。

場所

四股名

成績(三賞

上位戦成績

優勝力士

備考

昭和35年

大鵬

12勝3敗

(次点、技)

1勝2敗

横綱0勝1敗

大関1勝1敗

若乃花横綱

13勝2敗

2横綱3大関

1横綱1大関とは同じ一門。そのため優勝力士との対戦なし。

昭和37年九

豊山

12勝3敗

(次点、敢・殊)

4勝1敗

横綱1勝1敗

大関3勝0敗

大鵬横綱

13勝2敗

2横綱5大関

2大関が休場。優勝には敗戦。

平成17年秋

琴欧州

13勝2敗

(同点、敢)

2勝1敗

横綱0勝1敗

大関2勝0敗

朝青龍横綱

13勝2敗

1横綱3大関

1大関が休場。優勝力士には敗戦。

平成27年

照ノ富士

13勝2敗

(次点、敢・殊)

3勝1敗

横綱1勝0敗

大関2勝1敗

白鵬横綱

14勝1敗

3横綱3大関

1横綱は同部屋、もう1横綱は休場。優勝力士には勝利。

令和4年春

若隆景

12勝3敗

(優勝、技)

1勝2敗

横綱0勝0敗

大関1勝2敗

若隆景

1横綱3大関

1横綱休場。

全力士が次点以上の成績となり、今回の若隆景が初優勝を果たす結果となっている。

上位戦を見てみると、豊山琴欧州照ノ富士が勝ち越し、大鵬、そして今回優勝を果たした若隆景は負け越している。

特に照ノ富士はこの中で唯一優勝力士に勝利して13勝の成績を残しているため、数字だけの比較ならば若隆景より上と言える。

若隆景は横綱照ノ富士)が途中休場したという追い風も味方したと言えるが、それでも今場所の若隆景の相撲を見れば誰もが納得の優勝と言えるだろう。

そして過去の4名は全員『後の横綱大関』だということである。

しかも新関脇で12勝以上を果たした2場所後に大関昇進を果たしている。

若隆景の場合、先場所が平幕で9勝のため、今場所が起点の場所となるだろうから、過去の4名と同じ道を辿るのは厳しいかもしれないが、それでもいずれは大関に昇進できるのではないかという期待を持たせる記録と言えるだろう。

相撲内容に関しては特に問題ないだろうが、あとは『横綱戦初勝利』がカギとなるか。

過去大関昇進した力士で大関昇進3場所間に横綱戦未勝利の力士は『魁傑(2回目)』『朝乃山』の2名存在する(朝乃山は不戦勝1つあり)。

過去に存在するとはいえ、若隆景の場合はこれまでに横綱戦未勝利であるため、これは印象が悪くなる可能性も考えられる。

現状横綱照ノ富士1人であり、その照ノ富士戦は8戦全敗、横綱昇進後3戦全敗である(厳密に言えば若隆景に不戦勝1つあり)。

来場所以降、大関昇進への足固めが期待されるが、それと同時に照ノ富士戦初勝利なるかも注目である。

486. 照ノ富士はこの先完全復活できるのか?

春場所は1人横綱である照ノ富士が6日目に休場し、横綱不在の場所となった。

昨年照ノ富士横綱へ昇進する前は、白鵬鶴竜の休場が続くようになっていたため珍しい光景ではなかったのだが、照ノ富士横綱昇進後の横綱不在は初めてだった。

昨年初場所は関脇に在位しており、大関復帰を果たしてまもなく横綱へ昇進を果たし、横綱昇進後も連覇を果たし、さらには全勝優勝も達成するなど、まさに照ノ富士時代の到来であった。

しかし今年に入ってから初場所は終盤戦に黒星が重なり11勝、そして今場所は途中休場である。

『11勝→途中休場』だけで考えるならば、歴代の横綱でも見受けられる光景ではあるのだが、昨年の活躍を目の当たりにした直後にこの成績を見てしまうと、陰りが見えてしまうのは仕方のない事である。

照ノ富士横綱在位4場所目で初めて休場した。

昭和33年以降に横綱へ昇進した力士で、昇進4場所以内で休場した力士は何名いるだろうか。

以下に詳細をまとめた。

四股名

休場した場所

横綱優勝回数

横綱在位

横綱勝率

横綱昇進年齢

朝潮

2場所目

1回

17場所

0.638

29歳

輪島

3場所目

12回

47場所

0.766

25歳

三重ノ海

4場所目

2回

8場所

0.705

31歳

千代の富士

1場所目

29回

59場所

0.848

26歳

双羽黒

1場所目

0回

9場所

0.692

23歳

大乃国

2場所目

1回

23場所

0.662

25歳

武蔵丸

4場所目

7回

27場所

0.763

28歳

朝青龍

3場所目

23回

42場所

0.836

22歳

稀勢の里

2場所目

1回

12場所

0.5

30歳

過去は9名である。

横綱としては短命で終わった力士、勝率が低い力士もやや多いが、中には時の第一人者とも呼べる千代の富士朝青龍も含まれており、時の第一人者とライバルであった輪島、武蔵丸も存在する。

この4名の場合、昇進後早くに休場してしまったが、その後もしっかり結果を残したと言える。

問題は『昇進年齢』が挙げられるか。

照ノ富士横綱昇進は29歳である。

この中で29歳以上で昇進を果たした力士は朝潮三重ノ海稀勢の里の3名である。

この3名は短命、低勝率となっている。

三重ノ海は辛うじて7割に到達しているが、0.705は1場所平均『10.575勝』であり、横綱として考えた場合、物足りない数値と言えるだろう。

照ノ富士は順風満帆なように見えて膝に爆弾を抱えているため、常に危険と隣り合わせの状態である。

初場所途中から踵も負傷した様子だが、今後も怪我の積み重ねにより中々力を発揮することが出来ないかもしれない。

記憶に新しいのが稀勢の里である。

横綱昇進までは安定した成績を収め、横綱昇進場所でも優勝を果たしたが、その場所で負傷した部位が結果として引退の引き金となってしまった。

照ノ富士としてはこの先厳しい展開が続くかもしれない。

まずは治療に専念することだろう。

地獄から這い上がってきた力士であるため、この苦難も乗り越えてほしいところである。

485. 今場所の3大関の評価

激闘の優勝決定戦から1日経過したが、未だ余韻に浸っている自分がいる。

昨日は若隆景、高安、琴ノ若を中心に触れたが、本日は3大関について触れていこうと思う。

照ノ富士の休場により横綱不在となり、そうなれば優勝争いで期待されるのは番付上2番手の大関であった。

各々見ると御嶽海は若隆景に、貴景勝琴ノ若に、正代は若隆景、高安に勝利しており、全員が千秋楽まで優勝争いしていた力士にそれぞれ土をつけており、存在感は見せたと言える。

しかし15日間全体で見れば、二桁に到達したのは御嶽海だけであり、その御嶽海ですら千秋楽まで優勝争いに加わることは出来なかった。

横綱不在の中で関脇と平幕2人に遅れを取ってしまったのは大いに反省すべきことだろう。

まず新大関御嶽海から振り返ると、新大関の場所で11勝は過去の新大関の成績を考慮しても十分合格点だろう。

何せ私は場所前の展望では9勝と予想していたくらいだから、予想以上に御嶽海の強さを感じさせた場所だったように思える。

そして先場所に引き続き『連敗をしなかった』ことは評価に値するのではないだろうか。

終盤戦はヌケヌケの星になったが、それでも全体を通して見ると連敗はなかったし良かったと思える。

問題は負け方ではないだろうか。
4敗全てがあっさり土俵を割る内容だった。

暴論粘ってもそれが白星に繋がったかどうかはわからないが、最後まで諦めない姿勢を見せることもプロの仕事だと思う。

大関としては合格だが、来場所以降同じ展開ならば批判の声も大きくなる可能性は高い。

御嶽海にとって来場所以降が大関としての真価を問われる場所となっていくだろう。

次に貴景勝だが、11日目に勝ち越しを決めて角番脱出を果たした。

序盤戦に2敗したことを鑑みれば比較的早い勝ち越しだったと言えるだろう。

また何なら中日までで考慮すれば、2敗を喫しているとはいえ優勝候補には挙げられていた。

それほど連勝中の内容は貴景勝らしい押し相撲が冴えていたが、角番脱出してからは4連敗であり、終わってみれば8勝止まりだった。

気が緩んだわけではないと思うし、怪我の影響という感じにも見受けられなかった。

単純に終盤戦は力負けしており、押し切れない相撲が続いていたように感じた。

そもそも9日目の遠藤戦、10日目の宝富士戦もらしくない相撲内容であった。

貴景勝の場合、この先大きく相撲内容を変化させるのは不可能と言っても過言ではないだろう。

押しに徹してここまでやってきた力士であるため、この力士の場合はとにかく稽古あるのみと言ったところか。

最近の貴景勝は『好成績→怪我→角番→勝ち越し→好成績』という流れに至ることが多いため、来場所以降の奮起に期待である。

そして最後に正代。
ある意味では今場所最大の主役だったのではないだろうか。

角番場所で初日から4連敗。
しかも相撲内容があまりにも一方的であり、引退場所の大関の相撲を見ているような気分だった。

一度は正代について触れるのはやめようと思ったほどである。

5日目に初白星を挙げたときでも厳しいことには変わりなかった。

それがまさかの終わってみれば9勝6敗。
しかも今場所優勝決定戦へ進出した若隆景、高安まで下している。

終盤戦最強は正代と言っても過言ではない程強さを見せつけていた。

大関のためもちろん三賞受賞はないのだが、何か特別賞を受賞させても良いのではないかと思うほどだった。

とはいえ冷静に振り返ると、15日間全体で見ればあくまで9勝止まりである。

初日から4連敗のため優勝争いからは早々脱落し、二桁にも届いていない。

これで7場所連続で二桁に届かない成績であり、これに関しては大関として如何なものだろうかと問われても仕方ないだろう。

終盤戦の正代は間違いなく最強だった。
これは事実である。
しかし15日間全体で見れば優勝争いとは無縁である。
これも紛れのない事実である。

今場所は精神面も噛み合って力を発揮することが出来れば、展開次第では優勝争いも出来るという可能性を見出だしただろう。

ある意味地獄の底から這い上がってきたため、是非とも来場所以降は優勝争いに顔を出してほしいところである。

3大関の総評としては存在感を見せつける場面はあったが、自分自身が優勝争いに顔を出してほしかったというのが本音か。

来場所以降の活躍に期待である。

484. 2022年春場所千秋楽を勝手に語る

2敗、3敗力士の3名が本割で全滅。
荒れる大阪場所は最後までわからない展開に陥った。

結果的に12勝3敗の成績で『若隆景ー高安』の優勝決定戦へ突入した。

関脇ー平幕の組み合わせは昭和47年春場所の『長谷川ー魁傑』以来50年ぶりであり、奇しくも春場所であること、そして関脇と前頭7枚目という地位は今回の組み合わせと全く同じであった。

それにしても壮絶な優勝決定戦だった。

高安は立ち合いかちあげを選択したが、若隆景はやや右に動いてかちあげの威力を半減させた。

その後高安が差そうとするが、若隆景がおっつけて密着する展開から高安が得意の左を差して下手も引いたが、若隆景がうまく回り込みながら下手を切り、離れる展開となった。

そこから珍しく若隆景が張りにいく動きも見せながら下から攻めていったが、高安もしっかり残し、そして若隆景が思わず叩いてしまった。

正面土俵まで下がり、膝も崩れそうになり、若隆景は絶体絶命、九分九厘高安の勝利が決まったと思われた。

しかし高安の左腕を手繰りつつ、最後は右で上手を引いて大逆転の上手出し投げを決めた。

今場所は最後の最後まで二転三転する予想が難しい展開であり、さらには優勝決定戦の内容に関しても最後の最後までわからない壮絶な一番だった。

私個人としてはどちらが優勝しても構わないし、極論を言えば両者が揃って勝って13勝とした上で優勝決定戦を見たいという気持ちが強かった。

しかしこの壮絶な優勝決定戦を見てそんな気持ちは消え去った。

本当に素晴らしい一番だった。
両者に拍手を送りたい。
そして若隆景おめでとう!

今場所の若隆景は本当に強くなった。
『巧い力士』から『強い力士』に変貌を遂げた場所となった。

この場所の活躍により、大関候補筆頭の存在となった。

体型などから千代の富士のような力士になることを望むファンも増えている様子である。

正直場所前は、若隆景よりも同じ新関脇である阿炎の方が期待値としては高かった。

私も場所前の展望にて、優勝争いという点においては若隆景の名前は一切挙げていなかった。

ここ数場所地力をつけているため、勝ち越しはするだろうなという程度の見方であった。

それが蓋を開けてみれば恐ろしいほどに変貌を遂げた。

元来の巧さも兼ね備えているため、この先は誰もが期待したくなる力士になっただろう。

この優勝を皮切りにさらなる活躍を期待している。

そして優勝決定戦に敗れた高安。
今場所もあと一歩というところで優勝に手が届かなかった。

今場所に限って言えば、あともう半歩と言える程まで優勝に迫っていただろう。

私は場所前の展望にて高安はダークホースだと期待していたが、期待に違わず初日から10連勝を果たした。

そして割崩しが行われての終盤戦役力士との5連戦で、まず11日目に若隆景に敗れてしまった。

11日目の『勝手に語る』の方でも記載したが、この一番に関しては若隆景の方が俄然有利だと思っていたため驚きはなかった。

問題はその後重圧に押し潰されるのではないかという心配だった。

昨年春場所はそれで自滅してしまい、最終的には誰が相手でも勝てないのではないかと思わせる程の姿だった。

しかし今場所は違った。
敗れた翌日から御嶽海、貴景勝大関相手に連勝した。

相撲内容を見ても冷静であり、今場所の高安は重圧に潰される心配はないと思わせた。

しかしやはりともいうべきか、そうは言っても人間は中々変わるのが難しいものである。

14日目苦手正代との一番では、珍しく攻め急いで逆転のすくい投げに屈した。

いつもはむしろ攻めるのが遅いくらいの高安が攻め急ぐのだから、優勝への重圧、苦手への意識があったのだろう。

そして千秋楽本割に関しても、阿炎が良い相撲を取ったことは間違いないが、それにしても今場所の高安からは想像出来ないほどのあまりにも脆い敗れ方だった。

14日目、千秋楽本割に関しては重圧に潰されたといっても良いだろう。

正直千秋楽本割の一番に敗れた後、高安としては諦めの気持ちが生まれただろう。

しかしまさかの若隆景も本割で正代に敗れて優勝決定戦へ突入。

ここで高安は吹っ切れたと思う。
一度は諦めたが、再度チャンスが巡ってきた。

優勝決定戦の一番に関しては重圧に潰された様子は無かった。
高安の持っている力、力士生命全てを懸けて挑んだと言っても過言ではない一番だった。

本来ならば若隆景のおっつけでそのまま後退して敗れることも十分考えられた。

しかし高安はおっつけを堪え、相手の動きにも全て足を運ぶことが出来た。

しかし最後の最後で土俵の神様は若隆景に微笑んだといったところか。

最終的には優勝を果たせず、自己最高の13勝にも届かない結果となったが、高安の今場所全体の評価としては素晴らしい内容だったと思う。

上記の通り、敗れた翌日から御嶽海、貴景勝に連勝した辺りは、高安にとって成長した点だろう。

優勝決定戦の一番に関しても何も恥じることのないだろう。

大関から陥落して2年経過するが、まだまだ健在であることを証明した場所でもあるし、諦めなければこの先もチャンスはあるだろう。

何と言ってもあの稀勢の里の背中を見てきた力士なのだから、諦めない心は誰よりも熟知しているだろう。

来場所は上位総当たりの地位での活躍を期待したいところである。

最後に琴ノ若についても触れよう。

終盤戦は上記2名と比較すればやや影は薄くなってしまったが、間違いなく強くなっていることを証明した場所だった。

先場所と同様の成績で2場所連続の敢闘賞受賞だが、先場所と今場所では中身が大きく異なる。

2場所連続優勝争いをしたという点においても、先場所は最終的に何となく数字の上で残っていただけだが、今場所は終盤戦役力士と組まれた中での結果である。

前に出る圧力に関して大関にも通用することが証明出来たのは大きいだろう。

優勝争いをしていた御嶽海、終盤戦最強だった正代を下したのは素晴らしい。

場所の途中から記載しているが、間違いなく幕内中位以上の力量は備わっているだろう。

これが上位総当たりの地位でどれだけ結果を残すことが出来るかどうか来場所も注目である。

とりあえず力士に関して振り返るのはここまでにしておこう。
明日以降、大関に関しても記載したいと思う。

今場所は全体で見てもかなり良い場所だったと言える。

横綱不在の穴を新鋭の関脇、ベテランと若手の平幕が埋め、大関も存在感を見せる部分は多々あった。

そして一番の成長した点は『割の編成』だろう。
場所途中にも記載したが、今場所は比較的対応が早かった。

阿炎の大関戦が全て消滅したことは残念だったが、これに関しては今後の課題ということだ。

良い意味でこんなに二転三転する15日間もかなり珍しかっただろう。

今場所は本当に楽しませてもらった。
冗談抜きで私個人としてはトップ5に入るほどの面白さだった。

明日から退屈になるものだ…