秋場所12日目は大の里が熱海富士を下して1敗を守り、3敗で追いかける力士が安青錦、藤ノ川、朝乃山の3名となった。
自力だけでは無理だが、それでも明日にも大の里の優勝が決定する可能性を秘める展開になった。
本日注目の割である『大の里ー熱海富士』の一番。
大の里としてはやや踏み込み負けはしたが、右を差して下手を引き、熱海富士の当たりを止めたため、余裕のある下手出し投げだった。
下がりながらも余裕があるときは大の里自身もしっかり踏み込んでおり、ある程度形を作っているときである。
本日は下がりながらも安心して見ていられる相撲だった。
大の里はここ2日程相撲内容に厳しさが増しており、本日も前に出て勝つ内容ではないにしろ、負けない雰囲気は醸し出してきた。
残り3日間も大関相手に力の差を見せつけて独走して優勝してほしいところである。
一方敗れた熱海富士はいわゆる『3場所33勝』に届かない4敗目を喫した。
過去33勝未満で昇進を果たした力士は存在するが、私個人としては残り全て勝っても無理に昇進させる必要はないと思っている。
大関昇進のためには勢いも重要だが、安定感も重要である。
熱海富士が安定感のある力士ならば来場所も二桁の白星に乗せてくるだろうし、慌てて昇進させる必要はないと思う。
いずれにしても白星はまだ8つであるため、現状は二桁にも届いていない。
まずは連敗したことを切り替えて修正していくことが第一である。
『安青錦ー金峰山』の3敗同士の一番は安青錦が番付通り力を示した。
正直金峰山のもろ手突きがハマればわからない一番だと思っていたが、立ち合いですぐに左で廻しを引き、すぐに出し投げで回り込んで寄り切った。
安青錦が淡々と力を発揮して当然のごとく白星を掴んだような内容だった。
現状自力優勝の芽は消えているが、安青錦としては大の里と当たるまでは食らいついていくしかないだろう。
まぁ千秋楽に割を組まれ、14日目に優勝が決まっていたらどうしようもないが、安青錦らしい相撲を続けてほしい。
3敗の新関脇藤ノ川は霧島を下して3敗を守った。
立ち合いから果敢攻め立て、いなして霧島の体勢を崩してからの攻めも速かった。
霧島も必死に腕を手繰ろうとするが、藤ノ川は構わず前に出て攻め切った。
最後の攻め方については色々意見はあるかもしれないが、勝てば官軍といったところか。
これで今場所大関総なめとなり、成績を見ても次の番付を期待する声も上がってくるだろうが、私個人としてはまだその領域には達していない。
もちろん力はつけているし、動きの良さだけで勝っているわけではないのはわかるが、まだ絶対的な強さを発揮しているわけではない。
そもそもそれを新関脇ましてや新三役の力士に求めるものではないし、とりあえず残り3日間も暴れるだけ暴れて土俵を沸かせてほしいところである。
『美ノ海ー朝乃山』の平幕3敗同士の一番は朝乃山に軍配が上がった。
同学年の両者だが、出世の仕方、全盛期はそれぞれ全く異なる。
地力に関しては番付を下降させていたとはいえ朝乃山の方が上だろうが、美ノ海はここ2年程で上位圏内で勝ち越しまではいかなくても巧さを見せてきた。
そして今場所の美ノ海は力強さも兼ね備え、過去一良い相撲を取り続けていると言っても過言ではない。
朝乃山としてもこの先再度上位圏内で相撲を取っていくための力試しと言える相手である。
立ち合いは美ノ海が左前ミツに手がかかる展開となった。
しかし朝乃山は冷静に廻しを切り、左上手を引いて右腕を返す形で寄り切った。
やはり地力の高さは朝乃山と思わせる一番だった。
ここ数場所は平幕下位でも一桁勝ち越しに留まることが多くなっているが、それでも本日の一番を見ると現状の番付に留まる力士ではないと感じた。
それこそ朝乃山の現状の適性位置がイマイチはっきりしない部分もあるが、本日の相撲を見ると思わず『さすが』と声を上げてしまった。
一方敗れた美ノ海だが、正直言うと私個人としては美ノ海に勝ってほしいと思っていた。
もちろんそれは『朝乃山が負けてほしい』という意味ではない。
朝乃山が番付を下降させている中、美ノ海は遅咲きながら力をつけて技巧派力士として上位圏内で相撲を取っていた。
上位圏内では勝ち越しに届かないながらも今場所は力強さも兼ね備え、見事上位圏内で勝ち越しを果たした。
そのため地力の高さは朝乃山の方が上でもこの2年程で培った力で朝乃山の地力を上回ってほしいという気持ちが強かった。
結果としては残念だったが、それでも両者の良さが出た素晴らしい一番だったと思っている。
明日の注目の割は
『熱海富士ー朝乃山』
この一番である。
上記の通り熱海富士の今場所の大関昇進は難しいところだが、とにもかくにも二桁の白星に乗せなければ話にならない。
その中明日の対戦相手は3年前初優勝の壁として立ちはだかった因縁のある朝乃山である。
この一番は熱海富士としては勝たなければならない一番だと思う。
上記の美ノ海の件にも似通っているが、熱海富士は大関を狙っている力士である。
元大関の地力のある相手だからといってここで落とすようでは正直大関昇進はまだまだと言わざるを得ないと思う。
相四つの両者だが、ここで自身の右四つの方が上だということを見せつける一番にしたいところである。
話は変わるが、明日の割で感銘を受けたのが『大の里ー霧島』である。
この両者番付順で言えば千秋楽に割が組まれるが、展開によっては霧島が負け越した状態で割が組まれる可能性もあった。
それならまだしも最悪勝ち越していない状態でまだ割が組まれておらず、かつ優勝争いが千秋楽まで縺れた場合、下手をすれば千秋楽に割を崩す可能性もゼロではなかった。
そうなると大の里戦を組まれなかった霧島が千秋楽に別の相手に勝利して勝ち越しを決めてもケチがつく可能性があった。
そのため早めにこの割を組むことで上記の対応が出来た。
要は普段の割の組み方もこれに近い形を取れば大きな割り崩しをしなくて済むのだが。
話が脱線したが、大の里が大関を総なめして優勝を果たすのか。
残り3日間はこれが最大の注目点と言える。
熱海富士も二桁の白星に乗せることが出来るだろうか。