きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

811. 11勝以下で三賞2つ以上

先日、曙死去という残念なニュースが流れてきた(曙関連の記載は前回記載したのでそちらをご参照ください)。

改めて曙の相撲を動画で観たが、相手を寄せ付けず圧倒するという点において、異なる視点から横綱相撲を貫いた力士だと感じた。

また引退の美学も素晴らしかった。

話題は逸れるが、大相撲では巡業も始まっているようである。

私自身、あまり巡業話題に興味を示さないが、8月には北海道で巡業があるため観戦しようかどうか迷っているところではある。

そして本題に入るが、先場所活躍した尊富士と大の里。

この両者は春場所千秋楽の取組前に三賞2つが確定しており、優勝すればトリプル受賞という流れになっていた。

尊富士はその可能性は高いと思っていたが、大の里は意外だった。

私自身、大の里の場合は勝てばダブル受賞、もしくは優勝すればダブル受賞だと思っていた。

結果的に優勝は尊富士となったため、大の里はダブル受賞に終わったが、大の里自身千秋楽に敗れてしまった。

大の里自身が敗れたことにより三賞の数に変動はないが、私個人の思いとしては『今場所の活躍は素晴らしいけど三賞2つはどうだろうか?』という思いはあった。

そこで今回、11勝以下で三賞を2つ以上受賞した力士を調べてみた(昭和33年以降)。

詳細は以下の通りである。

場所

四股名

成績

三賞

昭和35年名古屋場所

柏戸(東関脇)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

昭和41年名古屋場所

鶴ヶ嶺(東前頭11枚目)

11勝4敗

敢闘賞、技能賞

昭和43年夏場所

栃東(西前頭2枚目)

10勝5敗(次点)

殊勲賞、技能賞

昭和43年秋場所

栃東(西前頭3枚目)

11勝4敗(次点)

殊勲賞、技能賞

昭和44年秋場所

栃東(東前頭2枚目)

9勝6敗

殊勲賞、技能賞

昭和45年初場所

栃東(東小結1)

10勝5敗

殊勲賞、技能賞

昭和48年夏場所

大受(東関脇1)

11勝4敗(次点)

殊勲賞、技能賞

昭和48年秋場所

大錦(西前頭11枚目)

11勝4敗(次点)

敢闘賞、殊勲賞、技能賞

昭和49年名古屋場所

高見山(西関脇1)

11勝4敗

敢闘賞、殊勲賞

昭和51年名古屋場所

麒麟児(西前頭4枚目)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

昭和57年春場所

出羽の花(東関脇1)

9勝6敗

殊勲賞、技能賞

昭和59年春場所

大乃国(東関脇1)

10勝5敗

敢闘賞、技能賞

平成元年春場所

板井(東前頭7枚目)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

平成2年夏場所

安芸ノ島(東前頭筆頭)

10勝5敗

殊勲賞、技能賞

平成2年九州場所

琴錦(西関脇1)

10勝5敗

殊勲賞、技能賞

平成3年名古屋場所

貴花田(西小結1)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

平成3年秋場所

若花田(西前頭3枚目)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

平成7年夏場所

武双山(西前頭4枚目)

11勝4敗

敢闘賞、殊勲賞、

平成7年九州場所

土佐ノ海(西前頭筆頭)

9勝6敗

殊勲賞、技能賞

平成9年春場所

出島(東前頭13枚目)

11勝4敗

敢闘賞、技能賞

平成9年秋場所

出島(東前頭筆頭)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

平成11年秋場所

安芸乃島(西前頭3枚目)

11勝4敗(次点)

敢闘賞、技能賞

平成17年九州場所

琴欧州(東関脇1)

11勝4敗(次点)

敢闘賞、殊勲賞

平成27年秋場所

嘉風(西前頭筆頭)

11勝4敗

殊勲賞、技能賞

令和5年名古屋場所

伯桜鵬(西前頭17枚目)

11勝4敗

敢闘賞、技能賞

令和6年春場所

大の里(西前頭5枚目)

11勝4敗(次点)

敢闘賞、技能賞

四股名当時

 

今回の大の里で『26回目(21名)』であり、思った以上に多いというのが率直な感想である。

しかし大半が昭和~平成一桁の時代と言える。

平成10年から現在まで26年の間では5回しかない。

栃東(初代)が史上最多の4回経験しているが、面白いことに優勝を果たした昭和47年初場所は技能賞のみの受賞である。

それぞれの三賞の内訳を見ると

・敢闘賞、殊勲賞:4回

・敢闘賞、技能賞:5回

・殊勲賞、技能賞:16回

・トリプル受賞:1回

以上の結果である。

 

上位を多く倒すことにより殊勲賞が確定し、そこにもう1つ受賞させても良いのではないか?となった時、敢闘賞の場合12勝以上の大勝のイメージも強いため、技能賞が添えられるといったパターンが多いのか。

過去には上記の表の通り、一桁勝ち越しでもダブル受賞もある。

その時代、その場所の流れというのもあるのだろう。

平成10年以降珍しい記録であったが、令和に突入してから2回目の出来事である(しかもここ2年の話)。

大の里は来場所おそらく新三役だし、伯桜鵬は現在十両在位とはいえ期待の星である。

両者ともに今後の活躍に期待である。

ちなみに上記表の力士で後の横綱昇進者は4名(柏戸大乃国貴乃花若乃花)、大関昇進者も4名(大受、出島、武双山琴欧洲)である。

大関以上が8/19、確率にして0.421とこれはあまり多いとは言えないか(伯桜鵬、大の里は母数から除外しての計算)。

はてさてこの先どうなるか。

810. ヒール?曙という力士

本日10時半頃、仕事中に曙死去のニュースを目にした。

思わず『えっ?』と声を発してしまった。

曙が現役時代、いわゆる『若貴時代』『曙貴時代』は私が相撲に熱中するきっかけとなった時代である。

曙と言えば現役中と引退後で評価というか認識とでもいうか、その辺りが一変した力士だと思っている。

現役時代の曙の印象としては『とにかく嫌われていた』である。

曙の素行の悪さに対しては何一つ聞いたことがない。
それでも嫌われていた印象が強い。

その理由として人間性、素行の問題云々ではなく『若貴がヒーロー』『曙がヒール』という構図が作られ、そういった認識がお茶の間でも広がっていたからである。

如何せんメディアの中で若貴が『アイドル』のような扱いを受けていたのも大きい。

曙が勝つ、もしくは若貴が負ければため息が聞かれる。
曙が優勝すれば表彰式では客が帰る。

そのため曙が引退後『日本人よりも日本人の心を持った横綱だった』という声も聞かれたが、私個人としては『現役時代あれだけひどい扱いをしておいてこいつら何言ってんだ』と小学生ながらに感じたものである。

ファンから(というよりもメディアからと言った方が正しいか)ひどい扱いをされていたと思うが、その中でも曙はヒールとしての損な役回りを自覚し、懸命に相撲を取っていたと感じた。

もちろんその中でも当時から曙のファンは多く存在し、『最強横綱』と称するファンもいる。

大相撲では『優勝回数=強さ』と認知されていることも多いが、曙の優勝回数は11回。
これは曙自身最大のライバルである貴乃花の優勝回数22回の半分である。

また同時期活躍した曙と同じハワイ出身の武蔵丸は優勝回数12回のため、武蔵丸にも優勝回数は劣っている(厳密に言えば曙が引退した時点では武蔵丸の優勝回数は8回だが)。

それでも曙を最強と呼ぶ背景には『部屋別総当たり制』と『全盛期のズレ』が挙げられると思う。

まず前者に関してだが、当時『二子山部屋全盛期』であり、貴乃花若乃花貴ノ浪安芸乃島貴闘力錚々たるメンバーが上位に在位していた。

上記力士達は同部屋のためそれぞれ割が組まれることはないが、曙は総当たりしなければならなかった。
さらに平成11年頃からは『武蔵川部屋全盛期』へ突入し、武蔵丸、出島、武双山雅山が上位に在位していたが、ここも総当たりしなければならなかった。

いわゆる『援護射撃』により、優勝を阻まれたことも多いため、曙にとっては不運だったと言える。

そして後者に関してだが、曙の全盛期は大関横綱へ一気に駆け上がり、さらにそこから3連覇を果たした時期辺りだろう(平成4年〜平成6年前半)。

この時期は若貴に対しても圧倒的な力の差を見せつけており、平成5年名古屋場所の『同期3人による優勝決定巴戦』が最たる例だろう。

そして平成6年夏場所で膝を負傷して長期休場となり、この間に貴乃花横綱昇進を果たした。

ここから貴乃花との立場が入れ替わるが、曙は膝の怪我による問題もあり、全盛期程の力を発揮することができなくなってしまった。

そのため曙ー貴乃花のライバル関係も厳密に言えば全盛期にズレが生じているのである。

『怪我がなければ』という思いも強いため、最強と呼ぶ声もあるのだろう。

そしてもう一つ、これは私自身の思いもあるが『他を寄せ付けない強さ』を見せ付けていたこともあると思う。

曙の武器と言えば長いリーチを活かした突っ張りである。
何もさせず3発くらいで吹っ飛ばす相撲を見せつけていた。
さらには四つに組んでも強い。
そしてあのどデカい体格。

こういった部分も最強を推す要因になっていたと思う。

余談だが曙は優勝関連で珍記録を多く残している。
一つは10回以上優勝を果たしながら全勝優勝の経験がないことである。
これは曙が唯一である。

そして全ての形の優勝決定戦に進出したことである。
というのも曙は2人、3人、4人、5人の優勝決定戦全てに進出した記録を持っている(制したのは2人と3人の時)。
これも曙はが唯一である。

最後に3連覇を達成した力士の中で最少優勝回数である。

3連覇以上を達成した力士は白鵬大鵬千代の富士朝青龍北の湖貴乃花と皆優勝回数20回以上を数える力士である。

そして曙より優勝回数の多い輪島(14回)、武蔵丸(12回)は3連覇の経験はない。

3連覇を達成した時期は膝の怪我はしていなかったため、もし怪我なければと考えさせられる結果と言えるかもしれない。

とにもかくにも曙が亡くなったことは本当に残念なことである。

損な役回りに立たされながらも曙が懸命に引っ張ってくれた。
曙がいたからこそ若貴時代は素晴らしく楽しかった。
これは間違いなく言えることである。

ご冥福をお祈りします。

809. 新入幕から2場所22勝以上の力士

4月へ突入して早1週間。

私自身は身近で新入社員が入社したとか4月らしいイベントがないため、あまり実感がわかないところだが、とりあえず気候が暖かくなってきたことは喜ばしい。

大相撲春場所千秋楽からも2週間経過したが、今でも尊富士の話題はちょいちょい見かける。

そして春場所もう一人の主役と言えば『大の里』だろう。

春場所は尊富士と大の里が盛り上げてくれた場所だった。

そんな大の里だが、新入幕から2場所連続二桁の白星を挙げたが、これは年6場所制となった昭和33年以降『7人目』である(ちなみに過去にこの話題に関して投稿しているのでこちらを参照。)。

また大の里は2場所連続11勝で合計22勝としているが、これは歴代2位タイの記録である。

過去22勝以上挙げた力士は以下の通りである。

四股名

場所

成績

3場所目成績

清國

昭和38年九州場所

昭和39年初場所

8勝7敗(西前頭14枚目)

14勝1敗(東前頭13枚目)

6勝9敗(西関脇1)

白鵬

平成16年夏場所

平成16年名古屋場所

12勝3敗(東前頭16枚目)

11勝4敗(東前頭8枚目)

8勝7敗(東前頭3枚目)

大の里

令和6年初場所

令和6年春場所

11勝4敗(西前頭15枚目)

11勝4敗(西前頭5枚目)

 

最高は白鵬の23勝であり、また白鵬は3場所合計においても31勝という最高記録を持っている。

唯一阿武咲が新入幕から3場所連続二桁の白星を挙げているが、阿武咲は3場所30勝のため、白鵬よりも成績は下である。

清國は2場所目の14勝が強烈な印象を残している。

余談だがこの場所は結果的に横綱大鵬が全勝したため優勝を逃したが、もし清國が千秋楽本割で関脇大豪に勝利していれば『15戦全勝同士の優勝決定戦』に突入するところだった。

現在は終盤戦に優勝争いを盛り上げるように割を組む傾向が強いため、同部屋以外では見ることの出来ない展開と言えるだろう。

大の里は夏場所おそらく三役に昇進すると思うが、そこでも活躍することが出来るかどうか。

二桁の白星を挙げることが出来れば必然的に3場所連続二桁白星と3場所31勝越えを達成することになるがはてさて…

808. 三賞トリプル受賞

大相撲春場所千秋楽から早1週間。

この1週間は月末週という事で余計早く感じており、いわゆる『相撲ロス』もそこまで感じなかった。

春場所は尊富士が優勝を果たし『110年ぶりの新入幕優勝』が話題となった。

この凄さに関しては相撲観戦している人ならばすぐにわかることだが、やはり話題性として十分だったのか、相撲観戦していない人でも耳にするレベルだったようである。

そのため『相撲凄かったんでしょ?』『110年ぶりなんでしょ?』等と声をかけられることが多かった。

新入幕優勝もそうだし、初土俵から所要10場所もとんでもないし、そして何気に幕尻優勝でもあった。

優勝ばかりに目がいきがちだが、今場所の尊富士は『三賞トリプル受賞』も達成している。

これは『6人目』の達成者であり、十分珍しい記録である。

今回は三賞トリプル受賞について触れていくが、過去の達成者は以下の通りである。

場所

四股名

成績

翌場所成績

昭和48年夏場所

大受(東関脇)

13勝2敗

2勝6敗7休(東大関1)

昭和48年秋場所

大錦(西筆頭11枚目)

11勝4敗(次点)

3勝12敗(東小結1)

平成4年初場所

貴花田(東前頭2枚目)

14勝1敗(優勝)

5勝10敗(西関脇)

平成11年名古屋場所

出島(西関脇)

13勝2敗(優勝)

10勝5敗(東大関2)

平成12年九州場所

琴光喜(西前頭9枚目)

13勝2敗(次点)

4勝11敗(西関脇1)

令和6年春場所

尊富士(東前頭17枚目)

13勝2敗(優勝)

 

 

優勝絡みや新入幕で相当な活躍をした力士が受賞している。

まず初めての受賞となった大受だが、優勝でもなく(ちなみに唯一の次点でもない)、新入幕でもなくトリプル受賞を果たしている。

この場所は関脇以下でその他大勝ちした力士が存在せず(西前頭7枚目の増位山、西前頭12枚目の龍虎の10勝が最高)、14勝1敗で同点だった横綱北の富士を下して優勝したことでトリプル受賞となったか。

大錦は成績こそ飛びぬけたものではないが、新入幕で横綱琴櫻大関貴ノ花を下したことが評価されてトリプル受賞となった。

貴花田、出島は上位圏内で優勝を果たしてトリプル受賞となった。

琴光喜は入幕2場所目であるが、新入幕の場所が全休であり、実質新入幕の場所で大勝ちし、さらには1横綱3大関を下したことが評価されて受賞となった。

しかしトリプル受賞を果たした翌場所勝ち越した力士は出島だけである。

来場所の尊富士はどうなるか。

 

上記でも少し触れているが、トリプル受賞を果たした場所の横綱大関戦は以下の通りである。

四股名

対戦した横綱大関

倒した横綱大関

最終番付

大受

輪島(横綱

琴櫻横綱

北の富士横綱

大麒麟大関

貴ノ花大関

北の富士

大麒麟

貴ノ花

 

大関

大錦

琴櫻横綱

貴ノ花大関

清國(大関

琴櫻

貴ノ花

小結

貴花田

小錦大関

霧島(大関

小錦

霧島

横綱

出島

曙(横綱

貴乃花横綱

千代大海大関

貴ノ浪大関

貴乃花

千代大海

貴ノ浪

大関

琴光喜

武蔵丸横綱

貴乃花横綱

出島(大関

雅山大関

武双山大関

武蔵丸

出島

雅山

武双山

大関

尊富士

豊昇龍(大関

琴ノ若大関

琴ノ若

 

 

その時の上位の人数、調子等も加味されるため判断は難しいところだが、冷静に考えると尊富士の上位戦は2名に留まる。

これは貴花田と同じで最少人数である(貴花田の場合この当時横綱不在で2大関のみ)。

尊富士の場合、最初に役力士戦割を組まれた小結阿炎を圧倒した一番、また同じく平幕で活躍していた大の里の印象が相まっているものがあるか。

いずれにしても文句のつけようがない優勝ではあるのだが。

最終番付に目を向けると、貴花田は説明不要の後の大横綱貴乃花であり、一時代を築いた力士である。

大受、出島に関しては大関としてあまり結果を残すことは出来ず、両者ともに短命大関である。

琴光喜大関昇進を果たしたのがこのトリプル受賞から約7年後の事であり、結果的には苦労人と言える。

大錦に関してはこの翌場所小結に昇進し、結局三役在位はこの1場所のみである。

大関まで昇進できること自体素晴らしい事ではあるが、それでもファンが望むような最高の結果を残したのは貴乃花だけと言っても過言ではないかもしれない。

ただでさえ尊富士の期待値は大きく跳ね上がっている。

この先尊富士はどのような成績を残していくだろうか。

807. 尊富士、大の里への期待の仕方

昨日尊富士の優勝により幕を閉じた大相撲春場所

110年ぶりの新入幕優勝、史上最速初土俵から所要10場所での優勝、新入幕の初日からの連勝11は大横綱大鵬と並ぶ記録であり、まさに尊富士の場所と呼べる場所だっただろう。

14日目の取り組みで右足を負傷し、千秋楽の出場に関しては賛否あるところだが、出場して白星を挙げて優勝を決めたという事自体は尊富士にとってはプラスになったと思っている。

今場所は尊富士の場所と記載したが、大の里の存在も忘れてはならない。
大の里も入幕2場所目だが、1大関、2関脇、1小結と下しており、壁という壁にぶち当たることなく来場所は新三役昇進をほぼ確定させた。

尊富士と大の里、この2名に対して
『すぐに大関横綱へ昇進』
角界を引っ張る存在になる』
と早くも期待を抱いているファンも多い。

確かにそう思うのも無理はない。
尊富士は新入幕にして達成した偉業はもちろんのこと、とにかく相撲内容が素晴らしかった。

対戦相手が格上になろうと変わらず出足の相撲を貫いており、そして白星に繋げていた。

大の里も課題の残る部分があるとはいえ、馬力、圧力だけで役力士から白星を挙げているし、体格を見ても只者ではないのがわかる。

しかし私個人としては『過度な期待はかけない方が良い』と考えている。

両者ともに今場所活躍は素晴らしい。
しかしまだ『上位圏外』である。

確かに上位も倒した。
それでもあくまで番付上は上位圏外であるため、総当たりとなった場合どうなるかは未知数である。

近年伯桜鵬、大の里、そして尊富士と新入幕で活躍する力士は多い。
尊富士は優勝まで辿り着いたわけだが、それ以前にとてつもない印象を残した新入幕は『逸ノ城』だろう。

1横綱2大関を下して13勝。
あの時も『白鵬の次世代を担うのは逸ノ城』と期待されたが、その後の活躍は正直鳴かず飛ばずに近いものがあった。
一応新入幕の8年後に幕内優勝を果たしたが、結局想像していたような時代を担う力士にはなれなかった。

そしてここ最近、新入幕ではないが阿炎、竜電、朝乃山といった謹慎明けの元々三役力士。
幕内復帰した場所こそ大勝ちするが、上位圏内に在位してからは誰一人二桁の白星を挙げていない。

阿炎は幕内復帰から2場所連続12勝かつともに次点の成績を残したが、いずれの場所も上位圏外。
そして一度優勝を果たしているがこれも上位圏外での事であり、上位圏内では9勝が最高である。

元々大関在位時から期待値の高い朝乃山も三役復帰すら中々苦労しており、今場所の勝ち越しでようやく復帰するといったところである。
そして元大関朝乃山ですら上位圏内では9勝が最高であり、二桁には届いていない。

新入幕ではないが、入幕2〜3場所目で優勝争いをして活躍した熱海富士も上位圏内では今のところ6勝、8勝の成績である。

来場所大の里はおそらく三役昇進であり、尊富士も優勝というボーナスを含めると上位圏内に在位する可能性がある。

私個人としてはまず上位圏内で2場所連続で勝ち越すだけでも十分だと思っている。
しかし期待が大きすぎるとそれでも物足りないファンは多いのではないだろうか。

尊富士を例に出すと、今場所琴ノ若、若元春、阿炎と役力士から白星を挙げたが、来場所この3名相手に全敗する可能性もあるだろう。

如何せん尊富士の地力がまだ未知数なこともあるが、仮に3連敗を喫したとしたらファンの中では『今場所の尊富士は調子が悪い』という認識に至る可能性が高い。

これに関してはそうではなく、単純に『これが上位圏内で闘い続けるということ』という意味になると思う。

新入幕優勝というのはとんでもない偉業である。
私が生きている間にもう一度観ることは難しいかもしれない。

ただそれだけの偉業を達成してしまうとこの先の重圧もとんでもないということである。

また尊富士は『史上最速優勝』を達成したわけだが、これも単純に『24歳の力士が初優勝を果たした』というだけならばそこまで早い記録ではない。

現役で見ても貴景勝は22歳で優勝を果たしているし、尊富士と同学年の豊昇龍は昨年優勝を果たしている。

横綱と比較するのもなんだが、大鵬貴乃花は24歳の段階で15回優勝を果たしている。

あくまで学生出身のため、そもそものスタートとしてはやや遅れているのである。

もちろん私自身、尊富士、大の里、そして熱海富士、豪ノ山といった若手力士には期待している。

それでも朝乃山の時にも何度か記載したことがあるが、過度な期待をかけると力士にとっては重圧になるし、何より期待している自分自身が辛い思いをする可能性が高い。

まぁそれを楽しむのも一興ではあるのだが。

私は今後過度な期待をかけずに見守りたいとは思っている。
と言いつつ、場所が始まり『勝手に語る』の方ではその名の通り勝手に語っていくとは思います。

806. 2024年春場所千秋楽を勝手に語る

本割で尊富士が豪ノ山を下し、見事新入幕優勝を果たして幕を閉じた春場所

初土俵から所要10場所は幕下付出の力士を入れても史上最速記録であり、異次元の記録を樹立した。

昨日朝乃山戦が終了して右足を負傷し、まさかこのような展開で千秋楽を迎えるとは思わなかった。

おそらく出場してくるとは思っていたが、この先の長い相撲人生を考えた時、それが誤った判断にはならないか、もしかしたらこの場所を最後に尊富士の活躍は見られなくなるのではないか、最悪な方向へとばかり予想してしまっていた。

怪我の具合に関して不明な部分が多いのも影響していたが、昨日車椅子で運ばれる姿を見ると千秋楽は間違いなく『万全ではない』ということが容易に想像出来る。

そしていざ取り組みが始まると立ち合いは張り差しを選択した。

立ち合い変化を予想するファンも多かったとは思うが、変化にいくことはなかった。
いつもの出足はないが、結果的にこの張り差しで豪ノ山の当たりを止めることに成功した。

そしてその後守りに入ることなく、豪ノ山に残されても攻めを休めなかったのが勝因だった。

本来の出足相撲ではないとはいえ、正直思った以上に動けることに驚きを隠せなかった。

もちろんそれは守りに入らなかったことが大きいと思うが、一番面を食らったのは豪ノ山かもしれない。

豪ノ山自身も尊富士の変化を考慮しつつ立ち合い当たっていったと思うが、張り差しで当たりを止められ、その後思った以上に攻めてきたため、驚いてしまった部分は大きいだろう。

それにしても素晴らしい優勝だと思う。

平幕優勝、特に下位の力士の優勝は実力以上の力を発揮し且つ運を味方にすることも多い。

それは本来ならば考えられないような残し方をしたり、逆転勝ちを収めるといった形である。

しかし尊富士は対戦相手が格上になろうと相撲内容に変化は見られず、ましてや出足速攻で役力士を圧倒する程のレベルである。

力負けしたというのが昨日の朝乃山戦だけであり、初黒星を喫した豊昇龍戦ですら相撲内容は圧倒していた。

そして綺麗な優勝の決まり方だったと思う。

今場所終盤戦からは尊富士に支配された場所だった。
10日目には後続との星の差は2つとなり、11日目に琴ノ若を下した時点でもはや尊富士の優勝はほぼ間違いなし、あとは尊富士が自滅しないかどうかの問題だった。

そして昨日敗れて星の差が1つになっただけではなく、負傷したことにより状況が一変してしまった。
これもある意味尊富士に支配された展開であるが、千秋楽は尊富士が敗れても大の里の結果次第では尊富士の優勝が決定することになっていた。

しかしこれでは他力本願であり、尊富士の支配力とは異なる展開になるところだった。

状況による問題もあるし、究極の結果論だが、本日の結果を見たら尊富士は敗れていても大の里が敗れたため優勝は決まっていたことになる。

しかし本日尊富士が本割で勝って優勝を決めたことで、数字の上でも13勝と文句なし、そしてやはり尊富士が支配した場所だったということで完結することが出来た。

綺麗な展開であり且つ理想的な優勝と言って良いだろう。

新入幕優勝というものは当然だが簡単なことではない。
今後この優勝は語り継がれるものとなるだろうが、この輝きをさらに増すためには今後の尊富士の活躍次第と言える。

もしかしたらこの場所を最後に泣かず飛ばずになるかもしれない。
そうなると『尊富士は新入幕だけ輝いた力士』と揶揄される可能性も高い。

新入幕優勝は素晴らしい。
ただこの先重圧を背負うことにもなったと言える。

とにもかくにも尊富士、本当におめでとう!
そして早く怪我を治してほしいと切実に願っている。

今場所を語る上でもう一人忘れてはならないのが入幕2場所目の大の里である。

尊富士が勝った時点で優勝は消滅したわけだが、千秋楽に先場所敗れた豊昇龍相手にどれだけの相撲を取ることが出来るか注目であった。

立ち合いの踏み込み、馬力は悪くないが、豊昇龍得意の土俵際の投げに屈してしまった。

大まかな展開としては尊富士が豊昇龍に敗れた一番と同じだが、馬力だけで何とか出来るほど上位は甘くないということである。

もちろんその馬力は魅力的であり、1大関、2関脇、1小結を下しており、それだけでも間違いなく立派ではあるのだが、琴ノ若と豊昇龍相手には連敗という結果である。

今後は廻しを引いてじっくり攻めていくという相撲も覚えていくことになるかもしれないが、この圧力、馬力を損なうことなくうまくプラスしていけるかどうかが鍵となるのではないだろうか。

まだ入幕2場所目のため、対戦相手としてもデータが少ない中で対戦をしている。
この馬力が通じなくなることも増えてくると思うが、止まった後にどのように対応していくのか。

大の里のこれからにも期待である。

今場所は主役の平幕2名の活躍を振り返れば十分と言えるが、熱海富士、豪ノ山、平戸海といった辺りも着実に力を付けている。

熱海富士はまだまだ自分の形になることは少ないが、それでも上位総当たりの地位で勝ち越しを決めた。

豪ノ山は先場所上位圏内で跳ね返されたが、度々大関からは白星を挙げており、今場所上位圏外ならばある程度力の差を見せつけることが出来た。

そして平戸海も攻めている時の強さは凄まじく、それが役力士相手にも通用するようになってきているのは成長の証である。

大関陣についても触れておこう。

最も期待を裏切ったのは間違いなく霧島だろう。
場所前霧島の優勝を予想したファンは多かったと思う(私もその中の1人)。
そして5勝で終わると思ったファンは0と言っても過言ではないだろう。

今場所は霧島にとって試練の場所になったと思う。
大関の負け越しは極論0勝でも7勝でも関係ないが、苦しい場所の中でも千秋楽に霧島らしい相撲を取って締め括ったのは収穫ではないだろうか(細かいことを言えばやはりもたついているとは感じたか)。

今場所の悔しさをバネに来場所以降の巻き返しに期待である。

昨日優勝争いから脱落した豊昇龍は尊富士、大の里、豪ノ山と若手の壁として立ちはだかる事が出来た。

この事実に関しては『大関の責任』ということで素晴らしいことではあるが、やはり最大の問題点は『絶対的な型が無い』という点だろう。

上記若手に対しての白星も全て逆転の投げ技である。
これが豊昇龍の魅力である一方『この形になれば豊昇龍が絶対有利』という展開がない。

だからこそ昨日変化に頼った結果、墓穴を掘ることになった。

変化自体も豊昇龍はよくやる戦法であるが、一つの必勝パターンを身につけることで、立ち合い変化もより効果的になるのではないだろうか。

本日大の里戦の立ち合いは前ミツ狙いだったが、あれを磨いていくべきだと思う。
正直現状の豊昇龍の相撲では大勝のイメージが湧いてこない。

大関琴ノ若は10勝で場所を終えた。
大関としては及第点だろう。
そして三役時代は『勝ち越せる安定感』だった力士が『二桁勝てる安定感』に変わりつつあるか。

それ自体は喜ばしいことだが、何度も記載するように『四つ相撲の技量がない』ことが最大の問題点だろう。

本日の霧島戦においても絶不調の霧島相手に形を許してしまい、琴ノ若自身は小手投げで逆転を狙うことしか出来ていない。

琴ノ若の苦手とする部類は前ミツ引いて食い下がるような力士だと思うが、まさに千秋楽はその展開で敗れてしまった。

守りの強さはピカイチだが、ここに四つの技量が加われば上の番付もすぐに見えてくるだろう。

貴景勝はもはや怪我をしていない部位が無いほどの力士だが、この力士にしかない押しの魅力があるため、治療に専念して欲しいと思う。

最後にもう一人朝乃山。

久々に上位圏内で皆勤したが、9勝6敗と成績だけ見たら物足りなさを感じるかもしれない。

しかしだからといって大関時代よりも特段弱くなったわけではなく、いうならば大きな変化もない。

単純に周囲が力を付けており、差が縮まっているというのが正しいだろう。

その中でも幕内復帰以降一度も勝てていなかった大栄翔に勝ち、そして尊富士を唯一圧倒したというのは朝乃山にとって収穫と言えるだろう。

来場所は三役に復帰すると思うが、ここで結果を残すことが出来るか注目である。

荒れる春場所もこれにて千秋楽。
歴史的快挙の瞬間を目の当たりにした素晴らしい場所であった。

そして若手も躍進しており、今後の場所も楽しみである一方、怪我の恐ろしさを再認識した場所でもあった。
また『プロと学生の力関係』に関してもかなり差が縮まっているのではないか。

これに関してもある意味深刻といえる問題ではある。

とにもかくにもファンの皆様も15日間お疲れ様でした。
明日からも毎日ではありませんがブログ投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

805. 2024年大相撲夏場所番付予想

番付 西
照ノ富士 横綱  
豊昇龍 大関 琴ノ若
貴景勝 大関 霧島
若元春 関脇 阿炎
朝乃山 小結 大の里
熱海富士 前頭筆頭 平戸海
大栄翔 前頭2枚目 豪ノ山
翔猿 前頭3枚目 髙安
宇良 前頭4枚目 王鵬
明生 前頭5枚目 阿武咲
翠富士 前頭6枚目 尊富士
隆の勝 前頭7枚目 御嶽海
琴勝峰 前頭8枚目 玉鷲
正代 前頭9枚目 錦木
湘南乃海 前頭10枚目 佐田の海
金峰山 前頭11枚目 北勝富士
一山本 前頭12枚目 錦富士
水戸龍 前頭13枚目 美ノ海
勝馬 前頭14枚目 竜電
時疾風 前頭15枚目 剣翔
狼雅 前頭16枚目 奄美
妙義龍 前頭17枚目  

 

東西の違いはあれど、上位圏内はこんなものではないだろうか。

優勝した尊富士は優勝ボーナスによりもう少し上の番付になる可能性もあるか。

予想が難しいのが平幕下位であり、幕内と十両の入れ替えもどうなるか。

十両への陥落は島津海、北の若、遠藤の3名が確定であり、幕内昇進は時疾風、水戸龍、欧勝馬が確定だろう。

妙義龍、大奄美辺りも十両へ陥落させられてもおかしくない成績ではある。

十両を見ると西十両筆頭で8勝の宝富士、西十両3枚目で9勝の友風が候補になるが、西筆頭は貧乏くじを引きやすいという点からこのように予想した。