本日徳勝龍の引退報道を耳にした。
ここ2場所は幕下でも負け越しが続いており、今場所初日から休場していたため、もしかしたらという思いもあった。
徳勝龍はいわゆる『花のロクイチ組』の一人であるが、その中でも決して目立った存在ではなかった。
何なら優勝する前までは『幕内と十両のエレベーター力士』だと思っていた。
体格の割に変化を多用したり、とったりにいったり、いまいち型がわからない、左を差したら力を発揮するんだなぁ~くらいにしか思っていなかった。
徳勝龍を語る上で欠かせないのが『令和2年初場所』。
何を隠そう幕尻優勝を果たした場所である。
私は物心ついたときから大相撲を観戦して約30年程になるが、この場所の徳勝龍以上に『神がかった力士』を見たことがない。
幕尻優勝は徳勝龍以前では貴闘力が達成している。
当時私は小学3年生であったが、貴闘力の勢い、優勝は物凄いことだと感じながらも、それと同時に『曙に強かった』という認識もあり、実力者のため驚きはありつつもまだ余裕(?)はあった。
平成24年夏場所の旭天鵬の優勝も『まさか序盤戦2勝3敗から優勝するとは』という驚きはあったが、場所の展開から棚ぼたな感じもあったため、また違う驚きであった。
徳勝龍の場合、中日を1敗で折り返し、そこから対戦相手のレベルが上がるにつれても面白いように連日突き落としを決めて白星を積み重ねていった。
そして千秋楽は出場している力士の中で最高位である大関貴景勝相手に『こんな攻めの姿勢を貫いた徳勝龍は見たことがない』という程の素晴らしい相撲で大関を下した。
平幕力士が優勝する場合、実力以上の力を発揮するというのはよくあることだ。
しかし徳勝龍以上に実力以上の力を発揮し、神がかった力士は存在しないだろう。
言い方は悪いが、優勝した後大負けするのは目に見えていたし、番付もすぐに下降させるとは思っていた。
しかしそれでも優勝後、徳勝龍がどんな結果であろうと必ず取り組みをチェックしていた。
それだけ大相撲ファンに強烈な印象を残した力士となった。
結果的に『生涯三役経験のない優勝力士』という珍記録を打ち立てた。
こういったところも徳勝龍の魅力となったのではないだろうか。
横綱も誕生している『花のロクイチ組』の中で目立つ存在ではなかったが、一発の印象だけならば誰にも負けないものとなっただろう。
この先、徳勝龍以上に神がかった力士は出てくるのだろうか。
本当にお疲れ様でした。