きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

695. 2023名古屋場所千秋楽を勝手に語る

豊昇龍が優勝決定戦で北勝富士を下し、優勝と大関昇進の両手に花で幕を閉じた2023年大相撲名古屋場所

本割りでは新入幕の伯桜鵬相手に番付上位の意地を見せつけ、決定戦では本割り敗れた北勝富士相手に借りを返した。

まず本割りの『豊昇龍ー伯桜鵬』の一番は、仕切りの段階では両者ともに譲らずといった鋭い目付きをしていた。

立ち合い豊昇龍が張り差しを選択し、そこからもろ差しを狙っていった。

伯桜鵬は張り手によりワンテンポ遅れた形となり、すぐに左を巻きかえたものの、豊昇龍もすぐに上手投げを決めた。

今場所の伯桜鵬は新入幕とは思えないほどの相撲技術の高さを遺憾なく発揮し、さらには勝利への嗅覚も冴え渡っていた。

しかしそれ以上に豊昇龍の三役としての経験、身体能力の高さが上回ったというところか。

優勝決定戦の『豊昇龍ー北勝富士』の一番は、12日目の本割りの反省を見事活かした相撲だった。

本割りでは豊昇龍が引いて呼び込んでしまい、黒星を喫してしまった。
優勝決定戦ではその逆で相手に引かせる相撲を取ることが出来た。

序盤戦で照ノ富士が途中休場し、新大関の霧島が4日目から土俵に戻ってきたが、霧島は実質3敗を喫している中でのスタートであった。

そのため必然的に次に期待がかかるのは番付上3番手となる関脇陣であった。

今場所は3関脇が大関取りの場所ということもあり、私自身もそうだったが、序盤戦の時点で『優勝と大関昇進の両手に花』という姿も思い浮かべていた。

思い浮かべていた姿は序盤戦の段階では豊昇龍だけでなく、大栄翔も若元春に対しても同様の思いだった。

若元春が最も早く3敗目を喫して『3場所33勝』に後がない状況となったが、それでも若元春は北勝富士を下して存在感も見せていた。

そういった意味では豊昇龍は北勝富士との優勝争いの一番に敗れており、また10日目には10連勝中だった琴ノ若にも敗れていたため、精神的にやられてもおかしくない状況はあった。

しかし3関脇の中で最後まで精神的にも崩れることなく、そして最後まで自分の相撲を貫き通したのは豊昇龍ただ一人だった。

大栄翔と若元春は終盤戦『3場所33勝』という重圧に耐えきれなくなり、自分の相撲を貫き通すことが出来なかった。

その結果が両者ともに14日目の『立ち合い変化』に現れた。

大栄翔は変化で白星こそ掴んだが、終盤戦は歯車が狂った状態のままであり、変化では修正することは出来ず、千秋楽も大栄翔の最もやってはいけない負け方で二桁の白星を逃した。

若元春はやったことのない変化で自分を見失い、千秋楽の朝乃山戦に関してはまるで相撲になっていなかった。

豊昇龍はいつもの場所ならば1~2回変化する力士である。
今場所は強いて挙げるならば霧島戦の右に動いて上手を求める立ち合いだけであり、1度も変化に頼ることなく自分の相撲を貫き通した。

正直14日目、千秋楽の本割り、決定戦とどこかで変化するのではないかと思って観ていた。

強心臓の豊昇龍ならばやってもおかしくないという思いもあった。
しかしそんなことは杞憂に終わった。

唯一『3場所33勝』という重圧をはね除け、無欲でこの数値に到達し、そして優勝も手にした。

私は展望において、現実的に考えれば大関昇進は1人に留まり、それは豊昇龍だと記載した。

また優勝に関しても本命は照ノ富士、次点で豊昇龍を挙げていたが、ある程度予想が当たっているとはいえ、何か思った展開とは違ったというのが正直なところではある。

その背景には錦木、北勝富士、伯桜鵬を中心とした新入幕等、活躍した力士も個性的な面々だったからではないだろうか。

まず錦木だが、間違いなく今場所の序盤戦から中盤戦の中心人物である。

先場所からの連勝は14まで伸び、一時期は単独先頭にも立ち、残りの対戦相手から考慮すれば優勝に最も近い存在であった。

終盤戦は新入幕に連敗し、自分の相撲も見失う形にもなり、最終的には4連敗を喫してしまった。

残念な結果であることは間違いないが、当初の期待値を上回る結果、さらには錦木自身としても目的は達成できた場所と言えるだろう。

錦木の場所前の目標は間違いなく『三役昇進』だっただろう。
東前頭筆頭と最も三役に近い存在であり、勝ち越せばほぼ確実にモノに出来る番付であった。

先場所錦木は前頭3枚目で中盤戦以降8連勝して9勝した。

この成績でも展開によってはチャンスはあったが、さすがに三役陣がほぼ勝ち越しを決めている中で、枠が空くことはなかった。

正直私自身、これで三役昇進が叶わないならばもう錦木の三役昇進はないと思っていた。

今場所は役力士に跳ね返されて負け越して来場所以降も平幕上位~中位を行ったり来たりになるかなと思っていた。

しかし今場所、錦木の強さは私の想像を遥かに越えていた。
どこかでいつもの錦木が出現するだろうと思い、結果として終盤戦は4連敗だったが、11日目までの強さは本物だったと思っている。

今後はこの強さを安定して発揮できるかどうかが課題となるのではないだろうか。

近年は30歳を越えてから力を発揮する力士も増えているため、今後の錦木に注目である。

そして決定戦まで進出した北勝富士
結果的には優勝を逃し、悔しい思いをしたと思うが、再び可能性が見えた場所とも言えるのではないだろうか。

ここ数場所の北勝富士は上位圏外でも負け越すことが増えていた。
今場所は前頭9枚目まで番付を落とし、さすがにここまで落ちたら力の差を示していたが、上位圏内で相撲を取れば昨年秋場所の二の舞だろうなと感じていた。

事実11日目に若元春と対戦して敗れている。
やはり北勝富士は上位圏内の力量ではなくなっていると感じた翌日、過去5戦全敗の豊昇龍相手に見事な相撲で完勝した。

同年代ライバルの御嶽海や年齢の近い正代が苦しんでいるが、今場所北勝富士がまだまだやれるというところを見せてくれたように感じる。

如何せん今場所活躍した錦木よりも2つ下なのだから、まだ老け込むには早いだろう。

再度優勝争いというのは中々難しいかもしれないが、まずは上位圏内で勝ち越す姿を見たいところである。

そして今場所ある意味で最も活躍したと言っても良い伯桜鵬。

元々相撲に興味のない私の周りですら四股名が知られている(まだ落合という認識だが)存在であったが、今場所の活躍でますます相撲に興味のない方に知れ渡ることになるのではないだろうか。

最終的な星数を見れば11勝である。
新入幕で11勝は特段珍しいわけではない。

しかし数字だけではないというのは上位圏内の力士を相手にしてあの堂々たる相撲を見れば一目瞭然だろう。

自分の体勢になれず、長い相撲になっても対応力があり、勢いだけではないため今後にも期待である。

今場所を盛り上げた立役者と言っても良いだろう。

気掛かりなのは肩の怪我である。
当然のように良い相撲を取っているため忘れがちだが、先場所から常時肩にテーピングを巻いている。

唯一豪ノ山戦だけは外してきたが、基本的はテーピングをしなければ状態としてはかなり悪いということか。

せっかくの大器が怪我で潰されるのだけは見たくない。
今が旬だが、場合によっては思い切った決断が必要になるかもしれない。

そして怪我に関してだが、初日から3日間休場し、4日目から土俵に上がった新大関霧島。
結果は負け越しとなってしまった。

御嶽海、翠富士と今場所星の挙がっていない力士に敗れたときは『休場して治療に専念するべきだ』と感じた。

大栄翔、若元春の2関脇に対しては素晴らしい相撲を取り『これが大関』と存在感を見せたが、それが限界だったか。

12日間全体で見ると、とにかく軽かった。
千秋楽の阿炎戦を見ても、本来ならば突っ張りを跳ね上げるのがうまい力士であるはずなのに、不調の阿炎の突っ張りに成す術なく後退していった。

途中本当の意味で怪我が癒えているとも思ったが、やはり無理が祟ったのか、最後3日間はむしろ悪化していたか。

これで来場所角番となるわけだが、懸念するのは来場所角番だということもそうだが、怪我が長引き勝ち越しが関の山となる大関になってしまうのではないかという点である。

ここ最近では正代、御嶽海が怪我に苦しみ大関から陥落してしまった。
そして貴景勝も厳しい立場である。

霧島もそうなってしまうのか不安でしかない。

そういう意味でも大関昇進を決めた豊昇龍もそうだし、上記の通り伯桜鵬もそうである。

何度も言うが、大器が怪我で潰されるのだけは見たくない。

今場所は事実上序盤戦で横綱大関の優勝が消滅したとも言える中、先場所ほどではないが役力士の活躍が光っていた。

結果的に大栄翔、若元春の大関取りは振り出しとなったが、琴ノ若が小結で初の二桁となる11勝を挙げたし、錦木、北勝富士の活躍、新入幕の活躍と明るい話題も多かった。

場所全体として見れば番付上位の豊昇龍が締めたという点でも良かったが、やはり絶対王者が不在だと優勝が12勝に留まってしまうのかという何とも言えない気持ちもある。

役力士と平幕力士との差が開きつつあるため、昨年までのような誰が優勝するのかわからないといった時代は終わりつつあるが、完全に抜け出す力士が不在ということも事実である。

豊昇龍が大関昇進を果たしたが、如何せん来場所は角番大関が2名である。

明るい話題が多いのも事実だが、不安もまだまだたくさん潜んでいると感じた名古屋場所であった。

とにもかくにも豊昇龍の昇進はめでたいし、楽しい15日間であった。

相撲ファンの皆様も15日間お疲れ様でした。

一応明日もとある力士のことで書き込みたいと思っています。