昨日豊昇龍が優勝と大関昇進の両手に花で幕を閉じた大相撲名古屋場所。
すっかり言うのを忘れていたが『豊昇龍おめでとう!』。
今場所は場所前から3関脇の大関取り、そして新大関霧島が焦点の場所だった。
『誰が昇進を果たすのか?』
『3名同時昇進はあるのか?』
このようにファンの間では盛り上がっていたわけだが、結果的には豊昇龍一人が昇進する形となった。
新大関霧島はまさかの初日からの休場となり、4日目から出場してきたものの結果6勝しか出来ず、来場所は角番で迎えることになった。
その他新入幕3名も注目されていたが、もう一人忘れてはいけない力士がいた。
それは『朝乃山』である。
2年ぶりに上位圏内で相撲を取る位置まで番付を戻してきたが『現状の朝乃山はどこまでやれるのか?』という点も今場所注目だっただろう。
最初に記載するが、私が今場所の朝乃山を15日間(正確には11日間)観た感想として『不安→絶望→希望』である。
『怪我による下降ではない元大関』という肩書きがあるため、復帰してから常時期待の大きい力士であった。
順当に番付を戻してきた点に関しては何ら問題ないが、元々過度な期待を寄せられていたことが多い力士であったため、幕下で2敗、十両で3敗を喫しており、十両・幕下の計4場所で優勝1場所に留まった事も問題視されていた。
私はその度に何度か朝乃山に関して投稿したが『過度な期待をせず静かに見守った方が良い』という旨の記載をした。
先場所久しぶりに幕内へ復帰を果たし、12勝の成績を残した。
しかし照ノ富士、大栄翔には完敗しており、相変わらず照ノ富士に通用しないのはもちろんの事、現状の朝乃山の力量は関脇陣にも劣っているという認識もされていただろう。
もちろんこの場所の勝敗だけで格付けは出来ないが、この場所上位圏内の力量を持った明生にも相撲内容では圧倒されていたため、来場所は二桁勝つのもどうだろうかという思いもあった。
そして名古屋場所初日を迎え、相手は明生。
上記の通り、先場所相撲内容では圧倒されていた相手だが、今場所は勝負においても黒星という結果だった。
そして5日目の北青鵬戦を観て『今場所は中々苦しいな』と感じた。
朝乃山は大型力士を苦手にしている傾向があり、その相手に無策とも言える胸を合わせる相撲で完敗している。
今場所だけでなく、今後の朝乃山の相撲に不安が過る内容であった。
7日目は豊昇龍と割が組まれた。
『勝手に語る』でも記載したが、この一番に関しては『豊昇龍に勝ってほしい』という思いがあった。
いくら元大関とはいえ、現在は豊昇龍の方が番付上位であるし、大関取りのためには落としてはいけない相手だと思っていた。
朝乃山が番付を落としていた間、現在の上位の厳しさを知らしめてほしいという思いがあった。
そして結果はそれを知らしめるかのように豪快な上手投げを決めた。
決して朝乃山に負けてほしいと思っているわけではないが、この結果自体は良かったと思っている。
しかし冷静に考えて朝乃山側からすると、ここまで豪快に投げつけられてしまう程差が生じてしまったというショックはあっただろう。
先場所の件でも記載しているが、この場所だけで格付けされるわけではないが、朝乃山にとってはショックな内容だったとは思う。
そしてそれに追い打ちをかけるかのように『怪我』である。
『怪我による下降ではない元大関』が怪我により休場してしまったのである。
この段階で4勝3敗だったため、休場となれば来場所は上位圏外の番付である。
早く大関、三役に戻るためにも勝ち越して番付を上げたいところだが、怪我によりそれは絶たれた。
しかも今後に支障をきたす可能性もある。
最悪な場合一生付きまとう怪我になるかもしれない。
まさに絶望的であった。
しかし12日目から再出場を果たした。
そして状態は万全ではなかったのだろうが、それでも出場してからは4連勝して勝ち越しまで結び付けた。
特に圧巻は14日目霧島戦、千秋楽若元春戦である。
朝乃山がこの2名に勝つこと自体は不思議ではない。
2年前までは朝乃山の方が番付上位であり、力量は上だったのだから。
しかし現状の力量差、そして朝乃山の状態が万全ではないことを考慮すると、かなり苦しい状況だったと言える(如何せん豊昇龍にはぶん投げられているし)。
霧島自身も決して万全ではないが、大栄翔、若元春を圧倒していたため、状態としては比較的上向きだったと思われる。
しかしその状況でも朝乃山は霧島を圧倒した。
しかも久々に朝乃山に対して『強い』と感じる内容だった。
朝乃山が土俵に復帰してからこの日まで、正直朝乃山に対して『強い』と思ったことはなかった。
これは良い意味で受け取ってほしいのだが、あくまで『当然』という見方が出来たからだ。
この日の霧島は立場が変わり。朝乃山にとって今は格上の相手である。
ここで圧倒できたことが今後の朝乃山の相撲において希望が持てるものだった。
そして千秋楽若元春戦も圧倒した。
先場所は大栄翔、今場所は豊昇龍と大関に近い関脇に完敗していたわけだが、若元春には逆に圧倒して存在感を見せつけた。
再出場で勝ち越し、来場所も上位圏内に位置できることは大きいし、何より万全な状態ではなくても役力士に負けていないという証明にもなった。
もしかしたら怪我をしたことにより気持ちも変わったのかもしれない。
もしそうならばまさに『怪我の功名』だが、万全でないことは間違いないだろう。
まずは怪我の治療に専念していただきたい気持ちがある。
上記の通り今場所の朝乃山に対しては『不安→絶望→希望』であった。
霧島戦、若元春戦で見せた気力と元々の力量を考慮すれば、大関復帰も夢ではないと思う。
しかし課題も多く残されている。
大型力士への取り組み方、まだ復帰してから対戦していない貴景勝、琴ノ若といった役力士にもしっかり相撲を取ることが出来るかどうか。
そして怪我の具合も如何なものか。
来場所以降の朝乃山にも注目である。