先日、令和初の本場所にて平幕 朝乃山が初優勝を果たし、幕を閉じた2019年夏場所。
千秋楽は朝乃山よりもトランプ大統領が目立つ形となってしまったが、それに関しては特に触れないでおこう。
若手の朝乃山が優勝を果たしたことで、令和の幕開けとともに、大相撲界も新時代へと突入する予感を感じさせるものだったが、その一方で審判委員に対する不平不満も多く聞かれた。
そして朝乃山自身の優勝は喜ばしいが、上位対戦圏外にて12勝のいわゆる『低次元優勝』であり、これに関しては上位陣の不甲斐なさも目につく結果となった。
今回は『12勝による優勝』に関して色々振り返ってみようと思う。
また今回記載する記録は、年6場所制となった1958年以降のものである。
まず12勝にて優勝を果たした力士は以下の通りである。
年代 | 四股名 | 番付 | 備考 | 年代 | 四股名 | 番付 | 備考 | |
1961夏 | 佐田の山① | 前頭13枚目 | 初優勝 | 1989名 | 千代の富士④ | 横綱 | 決定戦 | |
1961秋 | 大鵬 | 横綱 | 3人による決定戦 | 1994春 | 曙 | 横綱 | 3人による決定戦 | |
1965秋 | 柏戸 | 横綱 | 3人による決定戦 | 1995九 | 若乃花① | 大関 | 決定戦 | |
1967九 | 佐田の山② | 横綱 | 1997春 | 貴乃花 | 横綱 | 4人による決定戦 | ||
1969名 | 清國 | 大関 | 初優勝&決定戦 | 1998初 | 武蔵丸① | 大関 | ||
1972春 | 長谷川 | 関脇 | 初優勝 | 1998夏 | 若乃花② | 大関 | ||
1972夏 | 輪島① | 関脇 | 初優勝 | 1999秋 | 武蔵丸② | 横綱 | ||
1973九 | 輪島② | 横綱 | 12勝2敗1休 | 1999九 | 武蔵丸③ | 横綱 | 同一力士による 連続12勝優勝 |
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1974九 | 魁傑 | 小結 | 決定戦 | 2003春 | 千代大海 | 大関 | ||
1975初 | 北の湖 | 横綱 | 2003名 | 魁皇 | 大関 | |||
1975秋 | 貴ノ花 | 大関 | 決定戦 | 2007九 | 白鵬 | 横綱 | ||
1981秋 | 琴風 | 関脇 | 2012夏 | 旭天鵬 | 前頭7枚目 | 初優勝&決定戦 | ||
1981九 | 千代の富士① | 横綱 | 決定戦 | 2015夏 | 照ノ富士 | 関脇 | 初優勝 | |
1982名 | 千代の富士② | 横綱 | 2015秋 | 鶴竜 | 横綱 | 決定戦 | ||
1987初 | 千代の富士③ | 横綱 | 決定戦 | 2019夏 | 朝乃山 | 前頭8枚目 | 初優勝 | |
1987春 | 北勝海 | 横綱 |
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※四股名の隣の数字は12勝優勝の回数。
左側が昭和の記録であり、右側が平成以降の記録である。
1958年以降、昭和は全186場所、平成以降今場所の令和初の本場所も含め全182場所とほぼ同じである。
『12勝優勝』は過去に全31回あり、昭和16回、平成以降15回である。
『初優勝が12勝』というケースは全7回あり、昭和4回、平成以降3回である。
そして『12勝による優勝決定戦』は全13回あり、昭和7回、平成以降6回である。
面白いことに約30年区切りで見た場合、上記の割合は『ほぼ同じ』となっている。
単純計算ならば、2年に1回は12勝の優勝であり、10年に1回は初優勝が12勝ということになる。
そして12勝優勝の4割近くが、優勝決定戦になる可能性を秘めている。
私が何度か記載している『低次元優勝』と揶揄したくなる背景はここにあるかもしれない。
優勝決定戦に縺れる展開ならば『今場所は星の潰し合いによる面白い場所だった』という認識に至る可能性も生まれてくるが、上位陣が取りこぼしを繰り返し、下位の力士に優勝を奪われるような展開だと、やや興ざめする傾向にあるかもしれない。
今場所は3大関出場しており、貴景勝は途中休場、残り2大関は9勝止まり。
そして栃ノ心-朝乃山の『疑惑の一番』。
結果論だが、この一番で栃ノ心が勝利していれば、鶴竜、栃ノ心、朝乃山の巴戦になる可能性を秘めていた。
さすがに11勝の優勝は低次元過ぎて、それはそれで興ざめする可能性は高いが、それでも『22年ぶりの3人以上の決定戦』と考えた時、別の盛り上がりを見せた可能性はある。
こちらでも記載したが、朝乃山としては今後の活躍次第で今場所の優勝が輝きを増すと思われるので、来場所以降も奮闘していただきたい。
最後に12勝優勝に関する様々な記録を以下に記載する。
①複数回12勝優勝を果たした力士
・千代の富士:4回
・武蔵丸:3回
・佐田の山・輪島:2回
②場所毎の12勝優勝回数
③番付毎の12勝優勝回数
最後に『同年の複数12勝優勝』は、上記表の通り
1961年・1972年・1975年・1981年・1987年・1998年・1999年・2003年・2015年
9回となっており、そのうち『2場所連続12勝優勝』は1972年・1999年の2回である。
ちなみに『3場所以上連続12勝以上』は過去に存在しない。
令和へ突入した大相撲。
果たして今後どのような優勝が見られるだろうか。