大相撲初場所もいよいよ明日が千秋楽であり、優勝争いも佳境を迎えている。
今場所は序盤戦終了時点で照ノ富士、御嶽海、阿炎の3名に絞られたような雰囲気を醸し出しており、中盤戦へ突入してからは大関正代が連敗を喫する展開となった。
阿炎は今場所西前頭6枚目であり、上位圏外の力士だったため、早々今場所も正代は割崩しが行われるのでないかという予想も飛び交っていた。
私自身は割崩しに反対だったが、中盤戦の展開を見て千秋楽に『照ノ富士-正代』の割ではなく『照ノ富士-御嶽海』の割の方が良いとは感じていた。
結果として割崩しと千秋楽『照ノ富士-御嶽海』の割となった。
割崩しに関しては今更どうこう言うつもりもないのだが、今回は題名通り千秋楽『横綱-関脇』の割に関して触れていこうと思う。
基本上位陣の千秋楽の相手は番付の上位から順に組まれていくため、横綱の場合は『横綱-横綱』『横綱-大関』と組まれることが多い。
では『横綱-関脇』の割は過去に何回組まれているのか。
年6場所制となった昭和33年以降で話を進めるが、詳細は以下の通りである。
場所 |
横綱-関脇(14日目までの成績) |
備考 |
昭和56年初場所 |
(13勝1敗-14勝) |
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平成10年九州場所 |
(9勝5敗-9勝5敗) |
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平成11年初場所 |
(13勝1敗-12勝2敗) |
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平成13年秋場所※ |
(9勝5敗-11勝3敗) |
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令和4年初場所※ |
照ノ富士-御嶽海 (11勝3敗-12勝2敗) |
○勝ち ●負け
場所の隣の※は千秋楽結びの一番
今回で『5回目』であり、さらに千秋楽結びの一番に横綱-関脇の割は『2回目』である。
過去の事例としては上位の休場絡み、上位同士が同部屋で対戦が組まれないことによるものが多く、言い換えればところてん方式で番付順になった結果、横綱-関脇の割が千秋楽になったというパターンである。
しかし今場所は貴景勝の途中休場はあったが、本来ならば『照ノ富士-正代』という横綱-大関の割を組めるにも関わらず、あえて横綱-関脇の割を組むというある意味初めての試みと言える。
過去にも近い試みとして、横綱-関脇ではないが平成5年初場所千秋楽、番付順に『曙(大関)-小錦(大関)』ではなく、『曙(大関)-貴花田(関脇、四股名当時)』と片や横綱昇進、片や大関昇進を懸ける且つ優勝争いで1差の対決の割を千秋楽に組んだこともあった。
今回はこれに近い展開であると言える(平成5年初場所は割崩しはないが)。
さて上記表を見てみると、過去は横綱1勝、関脇3勝と関脇の方が勝ち越している。
また過去4回の内、優勝に絡む取り組みは昭和56年初場所、平成11年初場所の2回であり、結果的に関脇が優勝する形となっている(余談だが今回も初場所だが偶然とは恐ろしいものである)。
両方ともに有名な場所であるが、まず昭和56年初場所は千代の富士が初優勝した場所であり、千秋楽本割では北の湖が勝って優勝決定戦に縺れ込んだが、決定戦では千代の富士が制している。
そして平成11年初場所は現在でも史上唯一『優勝決定戦で取り直し』となったが、千秋楽本割、決定戦と千代大海が連勝し、逆転優勝を果たした。
そのため過去は事例が少ないとはいえ、関脇が有利な展開となっている。
ちなみに余談だが、千秋楽に『横綱-小結』の割は存在しないが『横綱-平幕』の割は『2回』存在する。
それは以下の通りである。
場所 |
横綱-平幕 |
備考 |
昭和48年九州場所※ |
○琴櫻-天龍(東前頭7)● (10勝4敗-9勝5敗) |
本来千秋楽に対戦予定だった横綱輪島が14日目に休場。 |
昭和55年春場所 |
○輪島-玉ノ富士(東前頭7)● (10勝4敗-9勝5敗) |
横綱三重ノ海(4日目)、大関増位山(8日目)休場。その他大関~関脇とは10日目までに対戦が終了。結びの一番は若乃花-北の湖の横綱同士。 |
恐ろしい程偶然にも対戦する平幕の番付、お互いの14日目までの成績が全く同じである。
昭和48年九州場所の場合、輪島が14日目から休場のため、本当に急遽組まれる形となった。
しかもこれが千秋楽結びの一番である。
結び前の一番は『北の富士(横綱)-貴ノ花(大関)』のため、順番を入れ替えても良かったような気もする。
そして昭和55年春場所の場合、ある程度休場力士が出たとはいえ、うまいこと対応しようと思えば出来た気がしないでもないのだが、このような展開となっている。
話が少し逸れたが、過去の事例からすると御嶽海有利ということになる。
7連敗中の照ノ富士相手にどう挑んでいくのか注目である。