昨日尊富士の優勝により幕を閉じた大相撲春場所。
110年ぶりの新入幕優勝、史上最速初土俵から所要10場所での優勝、新入幕の初日からの連勝11は大横綱大鵬と並ぶ記録であり、まさに尊富士の場所と呼べる場所だっただろう。
14日目の取り組みで右足を負傷し、千秋楽の出場に関しては賛否あるところだが、出場して白星を挙げて優勝を決めたという事自体は尊富士にとってはプラスになったと思っている。
今場所は尊富士の場所と記載したが、大の里の存在も忘れてはならない。
大の里も入幕2場所目だが、1大関、2関脇、1小結と下しており、壁という壁にぶち当たることなく来場所は新三役昇進をほぼ確定させた。
尊富士と大の里、この2名に対して
『すぐに大関、横綱へ昇進』
『角界を引っ張る存在になる』
と早くも期待を抱いているファンも多い。
確かにそう思うのも無理はない。
尊富士は新入幕にして達成した偉業はもちろんのこと、とにかく相撲内容が素晴らしかった。
対戦相手が格上になろうと変わらず出足の相撲を貫いており、そして白星に繋げていた。
大の里も課題の残る部分があるとはいえ、馬力、圧力だけで役力士から白星を挙げているし、体格を見ても只者ではないのがわかる。
しかし私個人としては『過度な期待はかけない方が良い』と考えている。
両者ともに今場所活躍は素晴らしい。
しかしまだ『上位圏外』である。
確かに上位も倒した。
それでもあくまで番付上は上位圏外であるため、総当たりとなった場合どうなるかは未知数である。
近年伯桜鵬、大の里、そして尊富士と新入幕で活躍する力士は多い。
尊富士は優勝まで辿り着いたわけだが、それ以前にとてつもない印象を残した新入幕は『逸ノ城』だろう。
1横綱2大関を下して13勝。
あの時も『白鵬の次世代を担うのは逸ノ城』と期待されたが、その後の活躍は正直鳴かず飛ばずに近いものがあった。
一応新入幕の8年後に幕内優勝を果たしたが、結局想像していたような時代を担う力士にはなれなかった。
そしてここ最近、新入幕ではないが阿炎、竜電、朝乃山といった謹慎明けの元々三役力士。
幕内復帰した場所こそ大勝ちするが、上位圏内に在位してからは誰一人二桁の白星を挙げていない。
阿炎は幕内復帰から2場所連続12勝かつともに次点の成績を残したが、いずれの場所も上位圏外。
そして一度優勝を果たしているがこれも上位圏外での事であり、上位圏内では9勝が最高である。
元々大関在位時から期待値の高い朝乃山も三役復帰すら中々苦労しており、今場所の勝ち越しでようやく復帰するといったところである。
そして元大関朝乃山ですら上位圏内では9勝が最高であり、二桁には届いていない。
新入幕ではないが、入幕2〜3場所目で優勝争いをして活躍した熱海富士も上位圏内では今のところ6勝、8勝の成績である。
来場所大の里はおそらく三役昇進であり、尊富士も優勝というボーナスを含めると上位圏内に在位する可能性がある。
私個人としてはまず上位圏内で2場所連続で勝ち越すだけでも十分だと思っている。
しかし期待が大きすぎるとそれでも物足りないファンは多いのではないだろうか。
尊富士を例に出すと、今場所琴ノ若、若元春、阿炎と役力士から白星を挙げたが、来場所この3名相手に全敗する可能性もあるだろう。
如何せん尊富士の地力がまだ未知数なこともあるが、仮に3連敗を喫したとしたらファンの中では『今場所の尊富士は調子が悪い』という認識に至る可能性が高い。
これに関してはそうではなく、単純に『これが上位圏内で闘い続けるということ』という意味になると思う。
新入幕優勝というのはとんでもない偉業である。
私が生きている間にもう一度観ることは難しいかもしれない。
ただそれだけの偉業を達成してしまうとこの先の重圧もとんでもないということである。
また尊富士は『史上最速優勝』を達成したわけだが、これも単純に『24歳の力士が初優勝を果たした』というだけならばそこまで早い記録ではない。
現役で見ても貴景勝は22歳で優勝を果たしているし、尊富士と同学年の豊昇龍は昨年優勝を果たしている。
大横綱と比較するのもなんだが、大鵬、貴乃花は24歳の段階で15回優勝を果たしている。
あくまで学生出身のため、そもそものスタートとしてはやや遅れているのである。
もちろん私自身、尊富士、大の里、そして熱海富士、豪ノ山といった若手力士には期待している。
それでも朝乃山の時にも何度か記載したことがあるが、過度な期待をかけると力士にとっては重圧になるし、何より期待している自分自身が辛い思いをする可能性が高い。
まぁそれを楽しむのも一興ではあるのだが。
私は今後過度な期待をかけずに見守りたいとは思っている。
と言いつつ、場所が始まり『勝手に語る』の方ではその名の通り勝手に語っていくとは思います。