きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

656. 長期休場を選択する勇気を教えてくれた栃ノ心

本日、栃ノ心が引退を表明した。

実を言うと知ったのは本日19時頃である。

いつも通り仕事終わりにトレーニングジムへ行き、帰ってきてシャワーを浴び、その後大相撲中継の録画を視聴して初めて知った。

ここ最近突然の引退が続いていたため、正直栃ノ心の引退に関して驚きはなかった。

むしろホッとしたと言える。

もう何場所も前から栃ノ心の相撲を見て5日目辺りに寂しさを覚えるという旨の記載をしていた。

栃ノ心の相撲を見ているとあまりにも痛々しいため、心苦しく感じることが多かった。

今場所ここまで5日間もそうだ。
そろそろ栃ノ心について記載しようと思っていたが『さすがに今場所千秋楽まで持たないだろう』と感じたため、引退のタイミングで記載しようと決めていた。

それが本日になったということだ。

冒頭から寂しいことばかり記載しているが、栃ノ心角界にもたらした影響は大きい。

いまや復活劇と言えば照ノ富士の印象が強いと思うが、栃ノ心も素晴らしい復活劇を見せてくれた。

過去には千代の富士、琴風も復活劇を見せた力士として有名だが、私の中で栃ノ心が礎だと思っている。

元々栃ノ心は怪力を武器に三役も経験していたが、相撲技術はお世辞にも高いとは言えず、上位戦ではまるで歯が立たない展開が続いていた。

そして平成25年に大怪我を負い、長期休場により幕下まで陥落してしまった。

そこから見事に復活を遂げて幕内復帰も果たしたが、それでも上位戦ではほとんど歯が立たない展開は変わらなかった。

栃ノ心は右四つの型を持っていたが、歴代でも最高峰の右四つの完成度を誇る白鵬には全く通じず、日馬富士鶴竜にもうまく取られ、自身よりも体格が勝る照ノ富士にも歯が立たなかった。
怪我をする前、琴欧洲把瑠都に対しても同様である。

大関相手に目を向けてもケンカ四つの琴奨菊にも16連敗を喫するなど苦手にしていた。

そのため幕内へ復帰したことは素晴らしいが、上位では通用しない力士で終わると考えていた。

そんな栃ノ心が平成30年初場所に初優勝を成し遂げた。

ここから14勝(優勝)→10勝→13勝(次点)と歴代最多タイとなる3場所37勝で大関昇進を果たした。

この時期の栃ノ心の変わり様は今でも鮮明に覚えている。

まず身体に関しては元々筋肉質な身体ではあったが、より凄みを増し、まさに筋肉の鎧を纏っているような身体だった。

あれは力士の身体ではなかった。
もちろん『良い意味』である。
アスリートを彷彿とさせる素晴らしい身体だった。

過去にも琴欧洲把瑠都といった外国人の大型力士は存在し、豪快な取り口で観客を魅了していた。

しかしその代償として膝を負傷することが多く、結果としてそれが引き金となり引退することも多い。

栃ノ心も怪我により幕下まで陥落してしまった。

しかしそこから這い上がり、身体を鍛え上げ、そしてさらには『力士としての強さ』を兼ね備えて戻ってきた。

この時期の栃ノ心の右四つは完成度の高いものになっていた。

身体能力に任せたものではなく、大相撲の技術を学び、鍛練した結果である。

栃ノ心の活躍を見て励みになった力士は多かったと思う。
また怪我をしている力士にとっては『長期休場を選択する勇気』を教えてもらったのではないだろうか。

栃ノ心の復活劇を見て長期休場を選択する勇気に繋がったと思う。

大関としては結果を残すことはできなかった。
何なら結果的に『最弱大関』と呼ばれることも多い。

しかしそれ以上に栃ノ心の復活劇には心打たれるものがあった。

このような復活劇を知っているからこそ、ここ数年の栃ノ心の相撲を見たくないという気持ちが強くなるし、何より筋肉の鎧も陰りを見せていた。
結果的に最後まで膝の怪我には悩まされることになった。

冒頭の方にも記載したが、引退にはホッとしている。

協会には残らず、この先も未定とのことだが、とりあえず今は身体を休めてほしいと思っている。

栃ノ心が協会に残した功績は計り知れない。
本当にお疲れ様でした。