霧馬山が本割、決定戦と連勝し、見事逆転優勝を果たして幕を閉じた2023年大相撲春場所。
本割、決定戦いずれも土俵際逆転の突き落としであった。
2年連続で春場所は新関脇が優勝を果たすという結果になった。
正直7日目で3敗目を喫したとき、霧馬山の優勝は全くもって予想していなかった。
余程な霧馬山のファンでなければこの時点で霧馬山が優勝すると思っていた人は存在しないと言っても過言ではないだろう。
何せこの時点で先頭とは星の差3つだったのだから。
ましてや6日目で怪我をした様子だったし、私個人としては『何とか気力で二桁勝ってくれ』という思いだった。
それが気が付けば星の差1つとし、最後は見事な逆転優勝を決めた。
千秋楽の相撲はいずれも逆転だが、今場所好調の大栄翔の突っ張りに対して大きく後退することはなかったため、ある程度余裕を持って残すことが出来たか。
元々足腰の良い力士であるが、攻める力もついたことでよりそれを感じさせるようになった。
ここ1年優勝を果たした力士に期待を寄せ、翌場所裏切られるという結果が続いていた。
霧馬山の場合、先場所三役で二桁の白星を挙げているため、いやが上にも期待を寄せられる事になるだろう。
如何せんここ最近で役力士で2場所連続二桁の白星が照ノ富士と貴景勝しかいないのだから。
霧馬山も大関候補とは呼ばれていたものの若隆景、豊昇龍と比較した場合、評価は低い傾向にあっただろう。
さらに言えば少し前ならば阿炎と比較しても霧馬山の方が低かったと思う。
それが先場所三役で二桁の白星を挙げ、そして今場所見事優勝を果たした。
名実ともに大関候補筆頭となり、期待のかかる来場所結果を残すことが出来るか楽しみである。
優勝に王手をかけていたが逆転されてしまった大栄翔。
本割、決定戦ともに固くなった様子は見受けられなかった。
自分の相撲を取り切っていたとは思うが、霧馬山がうまく残したといった所か。
結果は残念だったが、それでも今場所は大栄翔の良さが存分に発揮された場所と言える。
突き押しの威力はもちろんの事、終始場所を引っ張った事は十分に価値がある。
上位圏内で2場所連続二桁の白星を挙げたため、大栄翔にとっては来場所重要な場所になるだろう。
大栄翔は実力者だが関脇での勝ち越しが一度もないため、来場所も今場所のような相撲を取り切る事が出来るかどうか。
その他三役陣に目を向けると豊昇龍が千秋楽高安に敗れて10勝で終えた。
二桁に乗せていること自体は良いが、先場所序盤戦の覚醒したかと思わせた内容から考えると星数も内容面も物足りなさを感じる。
霧馬山戦で露呈されたが、色々なことが出来るのはもちろん良いことだが、ここぞというときに力を発揮するためには勝ちパターン、型が必要になってくると思う。
変化も多用しているため、まだここぞという場面で力を発揮出来ていない印象を受ける。
未完の状態で二桁勝つのだから潜在能力は計り知れないし、群を抜いている証拠ではあるのだが、また先場所序盤戦のような立ち合い低く鋭く当たって左前ミツを引く相撲を取ってほしいところである。
小結で11勝した若元春は小細工なしに力をつけている印象を受ける。
何度か記載しているが、左四つに組めば負けないという自信もかなりついてきているのではないだろうか。
問題は後手に回りやすいことであり、千秋楽の一番も土俵際の逆転だった。
土俵際しぶといことは持ち味の一つではあるが、これで攻めも早くなれば鬼に金棒ではないだろうか。
決して若いわけではないが、若手に負けじと積極的に上の番付を目指してほしいところである。
琴ノ若は終盤戦3連敗で二桁の白星を逃した。
今場所は詰めが甘い場面が多く見受けられた。
腰の重さを活かした相撲内容も多かったが、土俵際の詰めを注意していけばすぐにでも三役で二桁勝つことが出来るだろう。
そして今場所忘れてはいけないのが翠富士。
終盤戦は上位圏内の力士と割が組まれて5連敗を喫した。
悪い言い方をすれば『上位圏外で白星を挙げただけで上位圏内では通用しなかった』とも言える。
しかし5連敗の相撲内容を見ていても全く通用していないわけではないし、そもそもここ数場所は上位圏内で相撲を取っていた力士である。
横綱、大関不在の中、中盤戦まで場所を引っ張ったのは間違いなく翠富士である。
終盤戦5日間も存在感は十分に示していた。
翠富士にとっては天国と地獄を見たような場所になったと思うが、大きな経験になったと思う。
また他の小兵力士が『真っ向勝負でも勝てる』と自信を持ったのではないだろうか。
来場所は上位総当たりの地位で相撲を取ることになる。
屈辱を糧にして上位圏内での活躍に期待したいところである。
今場所の場所前は貴景勝の綱取りが最大の焦点であった。
というよりもそれ以外話題が無かったと言っても過言ではない。
それが貴景勝の休場に伴い、どこに注目すれば良いのかわからない場所になる恐れがあった。
しかし蓋を開けてみれば翠富士の健闘、そして何より三役力士が7名中4名二桁の白星を挙げ、さらには関脇が優勝を果たすという見事上位陣不在の穴を埋めたと言えるだろう。
そしてここ数場所番付変動が多く見受けられたが、固定化されつつあるか。
若隆景は怪我により脱落の恐れが考えられるが、霧馬山、豊昇龍は番付通り少し抜けた存在になっているだろう。
本当の意味で『大関候補』だろう。
霧馬山は来場所勝負の場所である。
そしてこれも番付通りだが大栄翔、若元春、琴ノ若が次点といったところか。
ここに阿炎も割って入りたいところだが、ここ2場所の成績を見ると少し遅れを取っている印象を受ける。
そしてかつて同格と呼べる存在であった明生、隆の勝に関してはやや厳しい立場となっている。
特に隆の勝に関しては平幕下位で苦戦を強いられているほどである。
そして御嶽海、北勝富士の平成4年生まれの2名は完全上位圏外に陥った印象を受ける。
北勝富士は中盤戦の7連勝があったが、終盤戦上位圏内の力士と割が組まれて結局4連敗である。
昨年秋場所も優勝争いをしていたが、終盤戦上位圏内の力士と割を組まれて崩れてしまった。
御嶽海に関しては怪我の影響もあるのかもしれないが、かつての『強い御嶽海』は影を潜めている。
同じ平成4年生まれの翔猿は今場所負け越したものの、ここ数場所は上位圏内の力士と渡り合う力をつけている。
そのため御嶽海と北勝富士もまだ老け込むには早いため、奮起してほしいところである。
新入幕では金峰山の活躍が光っていた。
実力者の阿炎、高安、隆の勝から白星を挙げているのだから、この先も恐ろしい存在になりそうである。
もう一人の新入幕北青鵬も原石の状態で9勝する辺りタダ者ではない。
十両では話題の落合が二桁勝っている。
上記の通り、貴景勝が途中休場したときはかなり不安に感じたが、三役力士の活躍に見事救われた場所であった。
来場所は霧馬山の大関挑戦、豊昇龍、大栄翔、若元春も足固めの場所となり、朝乃山も幕内へ復帰するため注目点は多いだろう。
その一方で下手をすれば大関が不在になる可能性もあるため、相変わらず心配される部分も多い。
とにもかくにも今場所も無事場所を終えられたことは良かったと思っている。
大相撲ファンの皆様も15日間お疲れ様でした。