本日妙義龍、碧山の引退が表明された。
両力士ともに『花のロクイチ組』であり、最高位は関脇である。
ここ数場所は十両でも勝ち越すことが難しくなったため仕方ないと言えるか。
花のロクイチ組も随分と人数を減らしてしまった。
その中今場所宝富士が10勝したのは大健闘だろう。
さて本題に移るが、先日貴景勝が引退を表明し、ブログにも記載したが本日は記録の面で貴景勝について振り返ってみたいと思う。
まず貴景勝が大関昇進を決めた場所は平成31年春場所であり、新大関の場所は令和元年夏場所である。まさに次世代を担うであろう若手の躍進といったところである。
初土俵から所要28場所で大関昇進を果たしているが、これは幕下付け出しを除くと歴代7位である。
琴欧洲(19場所)、朝青龍(22場所)、大鵬(24場所)、照ノ富士(25場所)、曙(26場所)、武蔵丸(27場所)に次ぐ順位である。
琴欧洲以外は全員が10回以上の優勝回数を数える大横綱である。
また細かい記録として『日本出身力士の高卒力士最速昇進』という記録を持っている。
昇進してわずか2場所で陥落となるが、これは新大関から関脇の最短陥落記録として歴代1位タイである。
しかし関脇へ陥落した場所、12勝の成績を挙げて特例復帰を果たした。
まず12勝は特例復帰場所における歴代最高白星であり、また12日目での特例復帰(10勝2敗)も歴代最速記録である。
細かいところで歴代1位の記録を保持している(最短陥落は不名誉だが)。
そして強さの証明として話題に挙がることの多い優勝回数だが、貴景勝は4回である。
また大関在位だけに絞った優勝回数に関しては3回だが、これも魁皇に次ぐ2位タイである。
余談だが最高位横綱の力士も含めると、歴代大関の優勝回数は以下の通りとなる。
優勝回数 |
大関在位中 |
|
7回 |
5回 |
|
5回 |
5回 |
|
5回 |
4回 |
|
4回 |
3回 |
|
3回 |
3回 |
|
3回 |
2回 |
|
3回 |
3回 |
|
御嶽海 |
3回 |
なし |
優勝回数に関しては最高位大関の中でトップクラスのため、貴景勝の評価は高い一方で、同じく強さの指標となりやすい大関の勝率に関してはどうだろうか。
最高位大関の中で絞ると以下の通りである(10位まで)。
勝率 |
大関在位数 |
|
朝乃山 |
0.680 |
7場所△ |
髙安 |
0.665 |
15場所△ |
0.6584 |
15場所 |
|
琴風 |
0.6583 |
22場所 |
0.650 |
4場所※ |
|
豊昇龍 |
0.647 |
7場所※ |
霧島(初代) |
0.6465 |
16場所 |
0.645 |
37場所 |
|
0.639 |
30場所 |
|
0.637 |
39場所 |
※現役大関
△現役だが現在大関陥落している
優勝回数3回以上を数える大関の中では最高勝率を誇る。
ちなみに優勝回数1位の魁皇は勝率0.615である。晩年が勝率を低下させた影響が強い。
ちなみに大関は『最低10勝』という言葉をよく耳にするが、10勝は1場所平均の勝率にすれば0.667である。それを越えているのは朝乃山ただ1人である。
晩年の成績が勝率を低下させる影響にはあるが、1場所10勝平均は大変な事であり、むしろそれが安定して出来る大関は横綱へ昇進してしまうのである。
余談だが大関在位中で1場所平均10勝に到達しなかった横綱へ昇進した力士は
北の富士(0.660)、琴櫻(0.643)、三重ノ海(0.594)、鶴竜(0.661)、照ノ富士(0.573)と数少ない。
話は変わり、場所によっては『12勝の優勝は低次元』と言われることが多いが、それでも12勝は1つの優勝ラインではあり、大勝の印象は強い。
最高位大関で大関在位中の12勝以上の場所数に関しては以下の通りである。
12勝以上の場所数 |
大関在位数 |
12勝割合 |
|
10場所 |
39場所 |
0.256 |
|
10場所 |
37場所 |
0.270 |
|
9場所 |
65場所 |
0.138 |
|
6場所 |
30場所 |
0.2 |
|
5場所 |
28場所 |
0.178 |
|
5場所 |
65場所 |
0.076 |
|
5場所 |
30場所 |
0.167 |
貴景勝は4位である。
ちなみに上記力士以外は全員4場所以下である。
上位3名は別格だが、最高位大関の場合はこれくらいが普通であり、上記の力士達はむしろ大関としては優秀と言って良い。横綱に迫った力士達と言っても過言ではないだろう。
優勝回数、勝率、そして12勝の場所数を考慮すると貴景勝は文句なしの強い大関である。
それでも貴景勝を酷評するファンも多かった。
その背景として『押し相撲だから』という抽象的なものも多いが、それ以上に『角番回数』と『休場数』だと考える。
角番回数に関しては以下の通りである。
角番回数 |
大関在位数 |
割合 |
|
14回 |
65場所 |
0.215 |
|
13回 |
65場所 |
0.2 |
|
9回 |
33場所 |
0.273 |
|
9回 |
30場所 |
0.3 |
|
8回 |
30場所 |
0.267 |
|
7回 |
39場所 |
0.179 |
|
7回 |
47場所 |
0.149 |
|
7回 |
32場所 |
0.219 |
|
6回 |
27場所 |
0.222 |
|
5回 |
25場所 |
0.2 |
|
5回 |
50場所 |
0.1 |
|
5回 |
28場所 |
0.178 |
|
5回 |
37場所 |
0.135 |
|
5回 |
16場所 |
0.313 |
|
正代 |
5回 |
13場所 |
0.385 |
貴景勝は9回の角番であり、割合にすれば3割である。
また角番回数上位でこの3割を超えるのは照ノ富士と正代の2名であり、この2名は大関から陥落した経験を持つ(照ノ富士の場合再昇進した2場所を除くと割合は0.357である)。
貴景勝は『好成績⇒休場⇒角番脱出⇒好成績』の繰り返しのため、長期に渡り強さを発揮できなかったという印象が強いのかもしれない。
休場数に関しても
休場数 |
大関在位数 |
割合 |
|
119休 |
65場所 |
0.122 |
|
118休 |
30場所 |
0.262 |
|
115休 |
65場所 |
0.118 |
|
102休 |
30場所 |
0.226 |
|
琴ヶ濱 |
83休 |
28場所 |
0.198 |
63休 |
47場所 |
0.089 |
|
60休 |
27場所 |
0.148 |
|
43休 |
39場所 |
0.074 |
|
43休 |
25場所 |
0.115 |
|
42休 |
50場所 |
0.056 |
割合で言えば貴景勝よりもさらに上の栃東が存在するが、栃東に次ぐ割合である。
どうしても貴景勝は怪我と隣り合わせのため、角番と休場の印象が強く、強い大関という認識を妨げてしまうのだろう。
とはいえ何度か記載しているように、貴景勝は大関としての重責を背負いながらも懸命に闘い、そして結果を残した力士だと思う。
次々と大関陥落者が出る中でも貴景勝は大関の地位を守り続けた。
そして関脇以下で相撲取り続けるような器ではないため、今回の引退は潔く素晴らしいものだと感じている。
改めて本当にお疲れさまでした。
第2の貴景勝誕生を心待ちにしております。