琴櫻は私の予想を超えることなく、大の里は私の予想を超えてきた。
まず『照ノ富士ー大の里』の一番から。
今場所の両者の状態、というよりも今場所の照ノ富士の状態からすれば先場所までの大の里が挑んだとしても勝てるイメージはなかった。
照ノ富士に左前ミツを引かれて当たりを止められて万事休す。
この展開を予想していた。
本日大の里は先場所同様もろ差し狙いの立ち合いでいった。
正直これが無謀だと思ったし、そして予想通り照ノ富士に左前ミツを引かれた。
これで勝負ありかと思われたが、大の里が左突き落としにいくと照ノ富士がばったり手をついた。
今場所の大の里は弱点が露呈されており、そのうちの一つが『左を使っていない』である。
まさかこの一番でその左が仕事をするとは思わなかった。
タイミングもあったかもしれないが、照ノ富士としても予想外の左突き落としだったのではないだろうか。
優勝争いという点では2敗の琴櫻が敗れたため、変わらず星の差は2つで照ノ富士が圧倒的有利だが、この先照ノ富士と対戦する力士達にとっては『勝てるかもしれない』という思いに至るかもしれない。
正直ここから照ノ富士が崩れるとは思えないし、何なら崩れてほしくないと願っているが、熱戦は期待できるかもしれない。
大の里としては二桁の白星へ後が無い状況だったが、横綱に勝利したことはかなり大きいだろう。
まだ大関戦が2つ残されており、その内の一つが天敵豊昇龍戦だが、豊昇龍戦でも工夫して相撲を取ってほしいところである。
そして『琴櫻ー霧島』の一番。
琴櫻としては苦手としている霧島戦。
霧島の調子に関わらず過去も敗れているため、勝てるイメージが沸かなかったが、案の定良いところなく敗れてしまった。
それにしても霧島が予想以上に動きが良かったこともある。
立ち合いの踏み込みは良いし、左おっつけも強烈だし、その後のいなし、廻しを引いての攻めの速さ。
良い時の霧島の相撲であり、琴櫻に守らせる隙を与えなかった。
特例復帰のためにはもう一つも落とせない状況の中、開き直ることが出来たのだろうか。
本日の相撲を見れば10勝は難しくないと思わせるが、そううまくいかないから追い詰められている状況にまで陥っている。
霧島としてはとにもかくにも残り全勝するしかない。
一方琴櫻は自身の取り組みの後に照ノ富士が敗れているため結果論ではあるのだが、自力優勝の芽を潰してしまった。
琴櫻は成績こそ安定しているが、春場所の尊富士戦、夏場所の阿炎戦のように意外に肝心な場面で敗れてしまうことが見受けられる。
上記の通り自力優勝の芽に関しては結果論だが、苦手相手に何も出来ず敗れたというのが精神的にもダメージを受けてしまうか。
優勝に関しては変わらず厳しい状況だが、切り替えて残り全て勝つくらいの気持ちが重要だろう。
カド番貴景勝が豪ノ山を下して5勝目。
立ち合い当たれており、その後の突き押しも悪くない。
そして今場所初めて十八番の左突き落としで決めた。
押し込んでいるからこそ決めることが出来たのだろう。
もし昨日勝っていれば白星先行していたのかと考えると本当に惜しい一番だったが、それを言ってしまったらキリがない。
極論初日からここ数日の相撲内容ならばとなってしまう。
相撲内容は上向きであり、明日から大の里→照ノ富士→琴櫻→豊昇龍と割が組まれていくだろう。
厳しい状況には何ら変わりはない。
それでも何度も苦難困難を乗り越えてきた貴景勝ならばという期待も大きい。
ここ数日の相撲内容が余計そう感じさせるものがある。
豊昇龍が阿炎を下して勝ち越し。
立ち合いその場で立つ形となり、一方的に攻められたが何とか凌いで逆転勝ちした。
この土俵際のしぶとさも豊昇龍の持ち味であり、この11日間を見ても盤石な相撲はほとんどないと思うが、それでも勝ち越せるのだから地力がある証拠である。
下位の力士に目を向けると、遠藤がある程度復調してきたようである。
今年に入ってから前頭二桁台でも大負けするようになり、先場所は十両での土俵だった。
十両では強さを発揮して大勝したが、今場所幕内へ復帰して初日からパッとしない相撲が続いていた。
かつての技巧派力士も幕内と十両のエレベーター力士になってしまうのかと感じたが、中盤戦以降負けなしである。
しかも相撲内容も上向きである。
さすがにかつて上位で遺憾なく技能相撲を発揮していた頃とまではいかないが、幕尻付近で相撲を取る力士の力量ではないと感じる。
まだまだ巧さを発揮して若手相手の壁になってほしいと思う。
明日の注目の割は
『照ノ富士ー阿炎』
この一番である。
正直照ノ富士が大栄翔戦を突破して以降、波乱があるとすれば阿炎戦だと思っていた。
今場所の照ノ富士ならば阿炎のもろ手突きに大きく後退することはないと思うが、本日大の里の突き落としにばったり手をついてしまったため、タイミング次第で阿炎の引きが炸裂するかもしれない。
照ノ富士絶対的有利な展開は変わらないし、百戦錬磨の照ノ富士からすれば本日の黒星はかすり傷程度だと思うがはてさて。
今場所は照ノ富士が圧倒的な強さで後続との差を広げており、上位圏外の力士の目立った大勝もないため、割に関しての話を聞かない。
しかし私個人としては『平戸海ー若隆景』の割を見てみたいと思っている。
動きの良さだけでなく、強さも感じさせるようになってきた平戸海がかつて大関候補最右翼だった若隆景にどのような相撲を取るのか。
逆に若隆景からしてもどれだけ力が戻っているのか確かめるのに最適な相手ではないだろうか。
両者ともに動きの良さにも定評があるため、どこかで割を組んでほしいと思っている。