大相撲ロスも徐々に無くなってきた頃合いであるが、本日は今年の顔でもある照ノ富士について色々振り返りたいと思う。
今年初めの照ノ富士はまず関脇に在位していた。
夏場所には大関へ復帰し、そして復帰してから僅か2場所目には綱取りを成功させ、秋場所には横綱昇進を果たした。
そもそも幕内へ復帰してから僅か8場所目には横綱に在位しているという、とんでもないスピード出世となったわけだが、今年の主な記録としては『年4場所制覇』『年間最多勝』が挙げられるだろう。
まず年4場所制覇から見ていくと、年6場所制となった昭和33年以降、年4場所以上制覇した力士は『8名』である(大鵬、北の湖、千代の富士、曙、貴乃花、武蔵丸、朝青龍、白鵬)。
皆優勝回数10回以上を数えている大横綱であるが、同じく初代若乃花、北の富士、輪島といった優勝回数10回以上の力士達や、また横綱在位は10場所であるが好成績を残している玉の海が達成していないところを見ると、年4場所以上制覇というのが偉大な記録だということがわかる。
ちなみに詳細は以下の通りである。
年代 |
年齢 |
その年の優勝回数 |
|
昭和37年 |
21~22歳 |
4回 |
|
昭和39年 |
23~24歳 |
4回 |
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昭和41年 |
25~26歳 |
5回 |
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昭和53年 |
24~25歳 |
5回 |
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昭和57年 |
26~27歳 |
4回 |
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昭和60年 |
29~30歳 |
4回 |
|
昭和61年 |
30~31歳 |
5回 |
|
曙 |
平成5年 |
23~24歳 |
4回 |
平成6年 |
21~22歳 |
4回 |
|
平成7年 |
22~23歳 |
4回 |
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平成8年 |
23~24歳 |
4回 |
|
平成11年 |
27~28歳 |
4回 |
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平成16年 |
23~24歳 |
5回 |
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平成17年 |
24~25歳 |
6回 |
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平成18年 |
25~26歳 |
4回 |
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平成19年 |
21~22歳 |
4回 |
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平成20年 |
22~23歳 |
4回 |
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平成22年 |
24~25歳 |
5回 |
|
25~26歳 |
4回 |
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平成25年 |
27~28歳 |
4回 |
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28~29歳 |
5回 |
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令和3年 |
29歳 |
4回 |
多くの力士が20代前半から半ばで達成していることが多い。
照ノ富士の29歳は千代の富士に次ぐ年長での達成であり、また初めて達成した年齢に限ると最年長記録である。
最近の力士は30代から力を発揮する力士も増えているが、照ノ富士もその類に入るのか。
最強横綱と称されることの多い北の湖が1回だけというのは意外かもしれないが、ライバル輪島の存在が大きいだろう。
また曙、貴乃花、武蔵丸は同時期に横綱に在位していた3名だが、それでも3名ともに名を連ねるのはレベルが高かったことを裏付ける記録かもしれない(それぞれ全盛期にずれが生じていることもあるが)。
次に年間最多勝に関してだが、照ノ富士は今年77勝13敗で受賞を果たした。
こちらでも色々触れているが、7年ぶりの70勝以上による受賞である。
ちなみに77勝以上で受賞した力士は『9名』である(栃錦、大鵬、輪島、北の湖、隆の里、千代の富士、貴乃花、朝青龍、白鵬)。
ここでは先程4場所以上制覇で名が挙がっていた曙、武蔵丸が消え、栃錦、輪島、隆の里の名が挙がっている。
栃錦、輪島は優勝回数10回以上を数える大横綱であるが、優勝回数4回の隆の里が意外に思われるかもしれない。
隆の里はこの年に綱取りを成功させており、毎場所のように千代の富士と優勝を争っていたため、78勝まで白星を積み重ねることが出来た。
ちなみに詳細は以下の通りである。
年代 |
年齢 |
成績 |
次点成績(四股名) |
|
昭和34年 |
33~34歳 |
77勝13敗 |
76勝14敗 |
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昭和37年 |
21~22歳 |
77勝13敗 |
68勝22敗 |
|
昭和38年 |
22~23歳 |
81勝9敗 |
65勝25敗 |
|
輪島 |
昭和48年 |
24~25歳 |
77勝12敗1休 |
69勝21敗 |
輪島 |
昭和51年 |
28歳 |
77勝13敗 |
72勝18敗 |
昭和52年 |
23~24歳 |
80勝10敗 |
75勝15敗 (輪島・横綱) |
|
昭和53年 |
24~25歳 |
82勝8敗 |
78勝12敗 |
|
昭和54年 |
25~26歳 |
77勝13敗 |
73勝17敗 |
|
昭和55年 |
26~27歳 |
77勝13敗 |
72勝18敗 |
|
昭和58年 |
30~31歳 |
78勝12敗 |
70勝20敗 (琴風・大関) |
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昭和60年 |
29~30歳 |
80勝10敗 |
63勝27敗 |
|
平成6年 |
21~22歳 |
80勝10敗 |
71勝19敗 |
|
平成7年 |
22~23歳 |
80勝10敗 |
69勝16敗5休 (曙・横綱) 69勝21敗 |
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平成9年 |
24~25歳 |
78勝12敗 |
68勝22敗 |
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平成16年 |
23~24歳 |
78勝12敗 |
69勝21敗 |
|
平成17年 |
24~25歳 |
84勝6敗 |
59勝31敗 (琴欧州・関脇) |
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平成20年 |
22~23歳 |
79勝11敗 |
61勝29敗 (安馬・関脇) |
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平成21年 |
23~24歳 |
86勝4敗 |
72勝18敗 |
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平成22年 |
24~25歳 |
86勝4敗 |
64勝26敗 |
|
平成25年 |
27~28歳 |
82勝8敗 |
69勝21敗 |
|
28~29歳 |
81勝9敗 |
71勝19敗 |
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令和3年 |
29歳 |
77勝13敗 |
55勝35敗 (御嶽海・関脇) |
ここでも優勝と同じく20代前半から半ばで達成している力士が多い。
照ノ富士は栃錦、隆の里、千代の富士に次ぐ高齢での達成だが、栃錦は年6場所制度以前から既に横綱として活躍しており、千代の富士は怪我の影響で6場所全て皆勤するということが少なかったため、初めて達成した年齢が高齢となっている。
唯一隆の里がいわゆる『遅咲き』という形で初めて達成している。
今回はその年の次点記録及び四股名も記載しているが、照ノ富士は周りと比較すると次点の記録は最少記録である。
そのためライバル不在を訴える者も出てくるかもしれないが、だからといって簡単に達成できる記録とは言えないだろう。
ちなみに余談だが、昭和53年の次点は2代目 若乃花の78勝12敗であるが、これは次点記録としてはぶっちぎりの歴代最多記録である。
そして『年4場所以上制覇』『年間77勝以上』の両方を達成している力士は大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍、白鵬の『6名』であり、いわゆる『優勝回数20回以上の大横綱』である。
照ノ富士はこの大横綱達と肩を並べる記録を達成したということである。
膝の大怪我、内臓疾患により序二段まで番付を落としたが、遅咲きながら全盛期を迎えている。
今後も優勝回数を重ね、6名同様優勝回数20回以上伸ばすことが出来るかどうか。
優勝回数20回に到達するにはあと14回であり、これはどんなに最速であっても2年以上要することになる。
常に膝の怪我とは隣り合わせであり、また照ノ富士は30歳になるため決して若いとは言えない。
今年1年の力量を保つ、もしくはさらに向上させて前進し続けるのか。
それとも緩やかに下降線を辿るか、はたまた急速に下降線を辿るか。
進化し続ける照ノ富士だが、来年以降も楽しみである。