きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

391. 2021年秋場所10日目を勝手に語る

中盤戦最終日の10日目。

昨日横綱としての初黒星を喫した照ノ富士が曲者の宇良を退けて連敗を免れた。

横綱として初黒星を喫した翌日に何をしてくるのかわからない相手ということで、精神的に如何なものかという問題があったが、とにかく冷静に相撲を取ることに徹したという内容だった。

まず立ち合いで宇良が右を差し、照ノ富士が極める形となったが、私は思わず目を逸らしそうになった。

一般人ならば確実に腕をへし折られる体勢であるが、宇良はそこからでも肩透かしでうまく回り込んだ。

一度膠着した後、再度宇良が肩透かしにいき、さらに足を取る動きを見せた。

しかし足取りはうまくいかず、一度離れる展開となり、しばらく見合ってから再度宇良が頭で当たり、右は差さずにハズにかけていた。

宇良でなければ出来ない動きで照ノ富士に廻しを許さずうまく取っていたが、照ノ富士は全く動じず、宇良が再度足取りに来たところで左から引っ張り込んで胸を合わせる形を作った。

この形になってしまえば宇良としてはかなり苦しい展開であり、照ノ富士は一安心である。

その後肩越しではあるが照ノ富士が得意の左上手を引き、最後は上手投げで裏返し…
と思いきや、宇良がかつての朝青龍を彷彿とさせるブリッジを見せて驚異的な粘りで残した。

さすがにその後は胸を押されて勝負ありとなったが、誰が見ても大満足の一番だろう。

上記の通り、宇良でなければ出来ない動きであり、宇良でなければ思い付かない内容である。

動いて翻弄して勝機を窺ったが、照ノ富士としてはとにかく慌てず挑んだという印象である。

肩透かしで来ようが、足取りで来ようが、離れて見合う展開になろうが、自分から突っ込んでいく動きはなかった。

いまや宇良の体型は小兵力士とは言い難いが、それでも他の力士と比較すれば小兵力士の部類であり、取り口も小兵力士時代に磨いたものも多い。

小兵力士にとって最も嫌な相手は『動じない大型力士』である。

照ノ富士は正にそれを忠実に再現したと言える。

両者ともに良さを存分に発揮した素晴らしい一番だった。

とはいえ気掛かりなのが、宇良の相撲を見ていると、もちろん何かやってくれるという期待があり楽しい力士ではあるが、怪我と隣り合わせのような危険な相撲も多い。

本日の腕を極められる場面もそうだが、隠岐の海戦の反り技にいったときもそうである。

思い切って何でもやるのは悪いことではないが、強引な相撲だけは避けたいところである。

私は正直小兵力士をあまり好まないのだが、宇良のように押しの基本技術が高い小兵力士は好感が持てる。

2度も大怪我をしてそこから復活を果たしたため、これ以上怪我はしないでほしいところである。

そして照ノ富士だが連敗を免れたが、やれやれという気持ちはあるだろう。

冷静な相撲に徹して白星を掴んだが、長い相撲を取ったことにより、終盤戦にどのような影響を及ぼすか。

本日は結びの一番だけでお腹いっぱいだが、その他取り組みにも目を向けよう。

大関陣は揃って白星。

正代は対戦成績で分の悪い大栄翔に攻め込まれたが、何とか回り込み、最後は叩きを決めた。

磐石な内容とは言い難いが、土俵際にしぶといのもこの力士の魅力であるため、まずまずといったところか。

一方昨日殊勲の星を挙げた大栄翔は、最後のひと押しで頭を下げてしまったため、うまく叩き込まれてしまった。

大栄翔側から見るとやや勿体ない一番だったか。

貴景勝が明生を下して6勝目。
立ち合い当たり負け、その後の突っ張りも上体が高いため厳しい展開ではないかと思っていたが、まともに引く動きは見せず、明生がいなしに来たところを良く見て押し切った。

中盤戦以降の相撲内容は安易な引きもなく、突き押しに徹することが出来ている様子である。

角番脱出まであと2勝であり、終盤戦も愚直に押しに徹することが重要だろう。

御嶽海が若隆景を圧倒。
合い口もあるのだろうが、本日は強いときの御嶽海だったというところか。

2敗同士の対戦が2番組まれていたため、確実に2人以上2敗力士が残るわけだが、残ったのは阿武咲と妙義龍である。

阿武咲は合い口の悪い遠藤相手に立ち合い低く鋭く当たっていき、そのまま圧倒した。

今場所の遠藤は立ち合い踏み込み右前ミツ良いところ引く巧さと強さを見せていたのが、阿武咲がそれを上回る立ち合い、出足で遠藤に相撲を取らせなかった。

3日目辺りでも記載したが、やはり平幕中位では図抜けた存在である。

そして妙義龍も昨日のうっぷんを晴らすかのような素晴らしい出足で隠岐の海を圧倒した。

いつもならば右差し速攻だが、本日は右前ミツ速攻だった。

差したら隠岐の海の懐の深さに苦戦すると考えたのか、良い相撲だった。

とはいえここ数日記載しているが、妙義龍がこのまま2敗で突き進むイメージは沸かない。
まず目指すべきところは二桁だろう。

そして阿武咲の場合、このまま割崩しがなければかなり大勝しそうだが、明日は貴景勝と割が組まれた。

中学時代からのライバルであるが、貴景勝としては好調相手とはいえ大関の意地があるだろう。

星数では阿武咲の方が上だが、上位の白星の方が重みがあることを見せつけたいところである。

そして貴景勝の場合、番付順にいけば13日目から正代、照ノ富士、御嶽海と続くため、それまでには勝ち越しを決めたいところである。

11日目、12日目と平幕相手が続くため、連勝して角番脱出したいところである。

気負わずここ数日の相撲を取ることが出来るかどうか。

一方阿武咲もここ数日の相撲内容を見ていると、十分にチャンスはあるだろう。

優勝争いもトップを走っているわけではないため、気楽に臨むことが重要だろう。

そして明日はもう一番
照ノ富士ー高安』の割も注目である。

正直今場所の両者の状態を見たら9:1で照ノ富士有利ではないかと思わせるが、高安は如何せん復活を果たした照ノ富士相手にまともに戦うことの出来る数少ない力士であるため注目である(むしろ対戦成績も高安が上回っている)。

高安は今場所2つの不戦勝を手にしながらいまだ4勝であり、本調子とは程遠いが、さすがに明日は期するものがあると信じている。

元々照ノ富士相手に上手を取らせない相撲を取るのがうまいため、明日もそのような展開へ持ち込むだろうが、問題は今場所の高安の攻め手がないことである。

序盤の正代戦、霧馬山戦といい、左四つに組みたいのか右四つに組みたいのかもはっきりせず、ただ無駄に体力を消耗して敗れている。

高安は根が左四つでも上手を引けば右四つでも十分であり、照ノ富士戦も右四つから勝利したことが数回ある。

明日は照ノ富士に上手を取らせないことだけではなく、攻める意識もしっかり持つことが重要だろう。

明日から終盤戦である。
照ノ富士が俄然有利なことに変わりないが、照ノ富士は膝に爆弾を抱えているため、そこが唯一の懸念である。

明日以降照ノ富士と対戦する役力士はどれだけ意地を見せることが出来るかどうか。