今場所の主役である白鵬、照ノ富士が揃って白星を挙げたが、両者ともに辛勝となった4日目。
まず白鵬の相撲を振り返ると、立ち合い張り差しを選択したが組むことはできず、叩いて回り込む展開となった。
その後も何度か叩くが圧力をかけられていないため隆の勝も落ちず、逆に隆の勝が左からいなして白鵬の後ろにつく形となった。
この瞬間『今日の白鵬はあまりにも雑すぎたな』と白鵬が負けると思っていたのだが、半身の状態でも素早く叩き込んで逆転勝ちを決めた。
あの体勢から逆転へ結びつける辺りさすがの一言だが、本日の内容は上記の通り雑すぎた。
ここ1~2年の白鵬は劣勢になると引き、叩きを見せることが多くなっており、また劣勢になる背景として雑な突っ張りを見せるときである。
2日目の遠藤戦もそれに近い形にはなっていたが、この時は安易に叩かず相撲を取っていたため大事に至らなかったが、本日はあまりにも叩きを多用していた。
それでも白星に結びつけるのだから誰よりも『負けない強さ』を持っている力士であると言えるか。
まだ自分の型である右四つに組んでの白星はないが、このまま流れを掴むことが出来るかどうか。
綱取り照ノ富士も今場所最もヒヤッとした一番となった。
大栄翔の左喉輪に後退し、さらには中に入られる展開となった。
その後照ノ富士はまともに叩いてしまい万事休すかと思われたが、何とか残して逆転に繋げた。
本日は大いに反省をするべき一番であるが、照ノ富士も白鵬同様『負けない強さ』が備わってきたか。
綱取り成功のためには序盤戦無傷で乗り越えたいため、本日は運を味方につけたということで明日以降修正したいところ。
今場所は冷静に相撲を取って白星を積み重ねており、良い内容であることに間違いないが、自分の型である右四つでの白星はない。
白鵬同様、自分の相撲を取って白星を挙げたら勢いを増すことだろう。
大関正代が連敗。
やはりここ数場所と何ら変わらないのかと思わせる一方、対戦相手の若隆景が完璧過ぎる相撲を取った。
左右のおっつけ、ハズ押し、頭をつける位置とどれをとっても完璧な内容だった。
地力も付けており、まだ序盤戦とはいえ、この流れならば新三役での勝ち越しもすぐに見えてくるだろう。
両関脇がともに白星。
昨日から出場した高安は本日も落ち着いて突き放し、最後は冷静に叩き込んだ。
昨日の内容を見てもそうだが、怪我の心配は全くない様子である。
御嶽海も翔猿を落ち着いて捌いた。
初日は逸ノ城に完敗したが、その後3日間は良い相撲を取り続けている。
この力士の場合、どこで崩れるかわからないが、格下相手には取りこぼさずいきたいところ。
平幕に目を向けると、逸ノ城が明生相手に力強く、さらには冷静な相撲を取った。
いつもならばもろ差しを許した瞬間ずるずると後退していくことが多いが、もろ差しを許しても慌てず右上手を引き、左を巻きかえて胸を合わせた。
逆の四つでも胸さえ合わせてしまえば逸ノ城の体格がものをいうだろう。
昨日も小手に振るなどただでは負けなかったため、やはり今場所は一味違うのか。
御嶽海同様、突如崩れることが多いため、過度な期待は止めておこう。
そして豊昇龍だが、相撲内容に力強さ、厳しさが出てきた印象を受ける。
先場所までは身体能力の高さを生かしての白星が多かったが、今場所は四つに組んでの強さ、また前に出る圧力もついている。
この調子でさらに立ち合いの鋭さが出てくれば、近い将来三役の常連となるだろう。
昨日も記載したが、白鵬にとって序盤戦最大の驚異になる存在だと思っている。
全盛期の白鵬ならば相四つ相手に無類の強さを発揮しており、お得意様とも呼べる相手であった。
それは『左前ミツの引き方』『廻しを切る技術』が歴代でも最高峰の巧さを持っているからである。
その白鵬の餌食になっていたのが現役で言えば照ノ富士、逸ノ城、栃ノ心、魁聖であり、過去に遡れば鶴竜、琴欧洲、把瑠都、豪栄道と数えるとキリがない。
しかしここ数年の白鵬は右四つで長い相撲になると苦戦する場面が増えてきている。
そしてこの逸ノ城相手には右四つではなく、もろ差し狙いでいくことが多い。
これは大型力士相手に胸を合わせては苦しいということを悟っているのだろう。
そのためもろ差し有利な体勢を作っていきたいのだろうが、今場所の逸ノ城は攻める姿勢と本日のようにもろ差しを許しても慌てない相撲を取ることが出来ている。
どっしり構えている相手を白鵬はどのように崩していくのか。
白鵬はここまで4日間、動きの中で白星を掴む内容である。
明日はおそらく組み合う形になると思うが、今場所の白鵬の状態がわかるのは明日かもしれない。
明日で序盤戦5日間が終了するが、白鵬、照ノ富士の2強が引っ張る形となるのか。
それともダークホースが出てくるのか。
注目である。