6月に突入して早半月が経過した。
先日の11日には朝乃山の処分が決定し、6場所連続休場となった。
これに関してはある程度予想通りであり、中には『番付を落としたところですぐに戻れるから逆に下の力士がかわいそう』という考え方もある。
確かにここ2場所の阿炎を見てもわかるようにそれは間違いないのだが、仮に朝乃山が三段目まで番付を下降させた場合、関取復帰までには最短で3場所、幕内復帰までは最短で4場所、幕内上位までは最短で5場所と考えると2年以上の時間を奪われることになる。
朝乃山にとっては今が大事な時期であり、その中で2年の時間を奪われることになる。
阿炎の一件を知りながらも軽率な行動を取り、さらには虚偽報告までしたのだからこれが朝乃山にとって最も酷な処分だと思う。
色々な考え方はあるにしろ、私はこれで良いと考えている。
さて本題に入るのだが、近年大相撲の幕内だけでなく、どの番付を見渡しても『大卒力士』が数多く存在する。
現役の代表格で言えば上記の朝乃山に加え正代、御嶽海、北勝富士、遠藤、そしてここ数場所力をつけてきた若隆景などが挙げられる。
よく話題に挙がるのが『大卒力士で横綱に昇進したのは輪島のみ』という事実である(旭富士は大学中退のため大卒ではない)。
大関で考えても豊山、朝潮、出島、琴光喜そして現役の朝乃山、正代と決して多いとは言い難い(武双山、雅山は中退)。
20回以上の優勝回数を誇る一時代を築いた横綱に目を向けると大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、白鵬といわゆる『中卒叩き上げ』である(朝青龍のみ高卒)。
そして上記の横綱のほとんどが21~22歳で早々と横綱に昇進している。
大卒力士の中にはアマチュア横綱もしくは学生横綱のタイトルを獲得し、幕下付け出しで初土俵を踏む力士も多い。
大学4年の時に獲得したらならば21~22歳であり、十分凄いことではあるのだが、上記のメンバーはその時既にプロの横綱に昇進しているということである。
千代の富士は26歳の昇進であり、上記メンバーの中では遅いように感じるかもしれないが、歴代の横綱昇進の平均年齢が26歳程度のため、特段遅いわけではない。
ちなみに現役力士で26歳といえば若隆景が該当する。
そして番付上横綱に最も近い大関に目を向けても貴景勝は25歳と若いが、朝乃山が27歳、照ノ富士、正代が29歳である。
これを考えると26歳での昇進は今ならかなり早いと言っても過言ではない。
では『大卒力士は大成しないのか?』と言われたら過去はそういった結果であることは否定できない。
じゃあ『中卒叩き上げが良いのか?』と言われたらそうとも言い難い。
現役の幕内力士で上位で活躍する中卒叩き上げは隆の勝、明生辺りが該当するが、年齢は隆の勝が26歳、明生が25歳と特段若いとも言い難い年齢である。
先日アメトーークで『大学お笑いサークル芸人』を放送しており、録画でこの放送を見たのだが『すぐにプロに行って結果を残す自信がないから大学でお笑いをやる』といった旨の話題が挙がっていた。
そして大学でタイトルを取り、自信を付けたところでプロの世界に入るというのである。
そしてここでプロ野球の話になり『いきなり清原みたいな活躍は難しい』という話題が挙がった。
野球の場合は中卒という概念はないため高卒であるが、近年プロ野球でも高卒でいきなり活躍するのは難しく、大卒の選手が活躍しているのである(もちろん例外も存在するが)。
言い換えるとどのスポーツの世界においても『プロとアマの力の差が縮まってきた』ということなのか。
それとも『プロのレベルが落ちてアマのレベルが向上したことによる差の縮まり』なのか。
これに関してはっきりしたことはわからないが、大相撲でも中卒叩き上げに拘る親方も多いだろうが、時代に合わせた指導方法が必要になってくるだろう。
確かに大卒の横綱は歴代で1人しかいない。
だからといって近年の中卒叩き上げ力士が活躍しているかと言われるとそうではない。
中卒の場合はまだ身体が出来上がっていないため、その中でどのように指導して身体を作りながら強くしていくのか。
大卒の場合はある程度身体も完成されており、相撲内容もほぼ確立されているため、どのようにして長所を伸ばし、短所を打ち消せるのか。
ただ単に『前に出ろ』というだけでは指導ではない。
鶴竜が引退し、白鵬も衰退してきている。
照ノ富士が横綱に最も近いが、いつ身体が壊れてもおかしくない状況である。
その中時代を繋ぐために強い力士を誕生させるには今まで以上に親方の指導力が試されるだろう。