中盤戦終了の10日目だが、まさかの展開が多い1日だった。
まずは『貴景勝ー高安』。
高安が久々貴景勝戦に勝利し、1敗を守ったがまさかこの両者の対戦で2分半の相撲になるとは思いもよらなかった。
貴景勝が勝つならば下から押し上げての電車道、高安が勝つならば貴景勝の当たりを止めて流れの中で叩いて決めるといういずれにせよ短時間の勝負を予想していた。
高安は左差し狙いのような立ち合いでしっかり当たっていき、貴景勝に当たり負けすることがなかった。
貴景勝の突き押しに後退したがうまく回り込み、その後は我慢して突っ張り合いの展開となった。
貴景勝としては早く勝負を決めたいという一心から横から雑な張り手にいってしまい、我慢負けしてしまった。
そこから両者予想していなかった頭四つの形となり、ここでも貴景勝は我慢できず蹴返しにいって体勢を崩してしまった。
高安としては貴景勝の当たり、出足を止めた時点で9割方勝利を確信していただろうが、逆転の突き落としを警戒していたのだろう。
相手が仕掛けてきたところを見逃さず、最後は得意の左四つに組んで上手投げで転がした。
高安は立ち合いの踏み込みも良いし、今場所はしっかり我慢も出来ている。
大関昇進~在位中の馬力は見られないが、冷静さと左四つの安定感は以前よりも向上していると感じる。
そして2つ目のまさかが照ノ富士の黒星である(正確に言えばこちらの方が順番は先だが)。
志摩ノ海に不覚を取るとは思いもよらない展開だった。
立ち合いの踏み込みは悪くなく、完全に右四つへ組むことは出来なくてもしっかり圧力をかけて志摩ノ海を追い詰めていった。
しかしその後の志摩ノ海の粘りに慌ててしまった。
志摩ノ海もしぶとい相撲かつうまい相撲を取っていた。
照ノ富士の圧力に後退しながらも決して頭を上げず、右のハズ、左のおっつけで照ノ富士に十分な形を許さなかった。
これが志摩ノ海の良さなのだが、現状上位相手には通じず、そのため今場所も2勝しか挙げることが出来ていなかった。
ここで志摩ノ海の良さを全面に出し切り、照ノ富士に勝利するとは相撲の難しさを改めて感じさせる一番となった。。
一方照ノ富士は圧力をかけること自体は良いのだが、志摩ノ海の粘りに慌ててしまい、後半は叩きにいくなど雑になる場面も見受けられた。
また今場所の照ノ富士に言えることだが、右差しを徹底するのではなく、すぐに抱え込みにいくのも苦戦を強いられる要因となっているだろう。
幕内へ復帰してから右四つの完成度は大関在位中よりも上だと思っているが、今場所は逆戻りしているようにも感じてしまう。
大関復帰のためには二桁はほしいところであり、終盤戦は4人の役力士との対戦を残して最低でも3勝2敗としなければならない。
照ノ富士にとっては正念場である。
そして場所全体のまさかとして、10日目を終えて高安が星の差2つ付けて単独トップに立っていることである。
序盤戦を見て確かに高安は好調だと感じさせた。
しかしその時点では照ノ富士、隆の勝も並走しており、またどの場所にも共通することだが下位の好調力士が1人ないし2人は存在するものなので、このような展開になるとは思いもしなかった。
今場所は平幕でも飛び抜けた好成績力士がいないことも高安にとっては追い風となっている。
そして上記の隆の勝だが、気が付けば6勝4敗と地味な成績となっている。
本日朝乃山戦も立ち合い踏み込んで右差し速攻を狙っていただろうが、朝乃山にも十分に右を差されてしまい、左のおっつけも不発に終わったため呆気ない一番となった。
今場所勝つ相撲は押し相撲の手本となるような綺麗な取り口であるが、負けている相撲は呆気ないし圧倒されている相撲が多い。
どこか御嶽海と似たような匂いを感じさせるが、そちらの方向にはいかないでほしいところである。
一方朝乃山は高安との対戦を終えて星の差2つのためかなり厳しいが、とにかく残り全て勝つくらいの気持ちで取り組んでほしいところである。
正直今場所の脇の甘さがかなり露呈されている照ノ富士に勝てないようでは一生照ノ富士に勝つことは出来ないだろう(先場所も似たようなことを記載したが)。
明日の注目の割は
『正代ー高安』
『照ノ富士ー隆の勝』
この2番である。
星の挙がっていない正代とはいえ、高安は正代戦7連敗中である。
今場所の正代相手ならば立ち合いで踏み込み負けすることはないと思うが、問題は左四つに組んだ場合『正代の左』には注意しなければならない。
左が少しでも覗けば強烈なすくい投げを打つことが出来るため、そこで体勢を崩される可能性がある。
また正代は土俵際の柔らかさもあるため、高安としては立ち合いしっかり踏み込むこと、そして土俵際への細心の注意を払うことだろう。
照ノ富士は過去2戦2敗の隆の勝相手である。
今場所の照ノ富士の相撲内容では右差しどころかもろ差しを許して速攻で敗れる可能性も高い。
また両腕を極める相撲は避けたいところであり、照ノ富士としては立ち合いしっかり踏み込み、右差しを徹底することだろう。
胸さえ合わせてしまえば負けることはないだろう。
隆の勝としては三役で二桁勝つためにも負けられない一番である。
明日から優勝争いも佳境を迎える終盤戦へ突入する。
俄然高安有利な展開だが、このまま全勝でいくとは想像し難い。
もし2敗へ後退したとき、その他力士の展開次第ではまだ波乱は起こると考えているがはてさて…