年内余白も少なくなり、寒さも身に染みる今日この頃。
今年の大相撲はコロナ禍の厳しい状況でも年5場所開催することが出来た。
協会は感染予防に徹底して臨んでいたと思うが、相撲という競技の性質上どうしても避けることが出来ない部分も多く、力士の中には不幸に見舞われる者も存在した。
その中でも年5場所開催されたことはファンとして喜ばしいことだし、懸命に土俵を努めた力士には頭が下がる。
さてそんな2020年の大相撲だが、他にも様々な出来事があった。
・朝乃山、正代の大関昇進
・ロクイチ組(豪栄道、栃煌山)の引退
・琴奨菊引退
・年2回幕尻力士による優勝
・22場所ぶりの大関優勝
・照ノ富士の復活
・鶴竜日本国籍取得
などなど…
昨年から栃ノ心、貴景勝、高安、豪栄道と関脇へ陥落する場所が続いており(貴景勝は復帰しているが)、幕内上位の顔触れにも少しずつ変化が見られている。
白鵬、鶴竜の両横綱も休場が続いており、若手の台頭も間違いなく見受けられるのだが、どうにもパッとしないというのが現状か。
昨年も似たようなことを記載しているのだが、要は『白鵬を脅かすまでには至っていない』という事実があるからだろう。
ここ3年間、白鵬が皆勤しながらも優勝を逃した場所は、全て同じ横綱である鶴竜が優勝を果たしている。
そのため若手力士は『絶対的』に強くなっているというよりは『相対的』に強くなっているという印象である。
もちろん若手の成長は著しいし、絶対的に強くなっているのも間違いない。
しかし一気に駆け抜けていきそうな力士は皆無である。
大関へ昇進した朝乃山、正代を見てもわかるように、朝乃山は白鵬に、正代は鶴竜に勝ったことがない。
さらに言えば復活してきた照ノ富士に対して朝乃山は3戦全敗である。
何度か記載しているが、右四つの完成度は決して高いとは言えないため、白鵬はもちろんのこと照ノ富士にも及ばない結果となっている。
そして鶴竜はともかく、白鵬に関しては出場してきたら結果を残すため、引導を渡すためにはとにかく土俵上で白鵬を潰すしかないだろう(潰すという表現は語弊があるかもしれないが)。
白鵬としても体調を整えることが出来ればまだまだ出来るという思いが強いだろう。
そのため出場してきたら全力士が白鵬を倒す気持ちを持って臨んでほしいところである。
そして気掛かりというか何というか、貴景勝の評価があまりにも低いように感じる。
11月場所にて久しぶりの大関の優勝をもたらしたが『上位がいなかったから』と評価が低い。
これに関してはわからなくもないが、貴景勝以外の上位が休場したことに関しては貴景勝自身に否があるわけではない。
またこの理由だけで話を進めるならば、7月場所にて同様の立場にあった朝乃山は幕尻の照ノ富士に優勝をさらわれるという失態を犯している。
そのため貴景勝はしっかり大関の責任を果たしたと言えるのではないだろうか。
私が貴景勝に対して懸念する点は『過度な体重増加』である。
膝の怪我もあり、また機動力を殺さないためには安易な増量は避けてほしいところである。
そしてファンから挙げられる最も多い低評価が『押し相撲だから』というものである。
確かに歴代で押し一本にて横綱へ昇進した力士は少ないが、どうにも『四つ相撲が取れる』=『横綱』という認識が強すぎるように感じる。
四つが取れるだけで横綱へ昇進できるのならば、歴代横綱が72人のわけがない。
そもそも横綱といっても強さの尺度がばらばらである。
優勝回数20回を数える大横綱から昇進以降1度も優勝出来ず引退する横綱も存在する。
さらに言えば横綱の強さにおいて感覚を狂わせてしまったのは間違いなく朝青龍、白鵬の『モンゴル2強横綱』の影響である。
この2強が当たり前のように優勝回数20回以上を重ね(白鵬に至っては前人未到の44回である)、7連覇を達成し、連勝記録も積み重ねる。
2003年~2012年の間、両者それぞれの1強時代、そして2強時代にて土俵を引っ張ってきたわけだが、10年近く当たり前のように結果を残す横綱を目の当たりにしたため、横綱像が大きく崩れたと言える。
白鵬の次に横綱へ昇進した日馬富士も優勝回数9回を数え、また白鵬に対抗できた数少ない力士であったが、白鵬と比較されるため『弱い』と認識するファンが多かった。
そもそも弱ければ9回も優勝することなど出来ない。
話は少しずれたが『押し一本だから』という理由だけで貴景勝を酷評するのは如何なものかと思う。
相撲の幅が広いことに越したことはないし、押し一本では力士寿命も短いかもしれないが、貴景勝もそれがわかった上で自分には押し相撲しかないと腹を括っているだろう。
強い横綱になることが出来るかどうか、短命になるかどうかなど現時点では不明だし、いずれにせよ力士になった以上目指すべき所は横綱という頂だろう。
貴景勝は自分の信念を貫いて押しに徹してほしいところである。
そして今年嬉しかったことというか衝撃を与えたのが『照ノ富士復活』だろう。
もはや一発勝負の実力は角界1と言っても過言じゃないだろう。
正直ここまで復活しているとは思っていなかった。
徐々に復活してきているという点では十分な成績だったが、十両の上位でまだ10勝しか出来ないという見方も出来た。
そのため7月場所久々に幕内へ返り咲き、いきなり優勝を果たす姿を見て本当に驚かされた。
問題は『15日間膝が耐えられるかどうか』この1点だけとも言える。
大怪我と内蔵疾患により番付を序二段まで下げ、そこから相撲内容もしっかり見つめ直したことで、右四つの完成度だけで言えば以前よりも遥かに向上していると言える。
時折強引な相撲が顔を覗かせるが、これに関しては小兵力士を相手にするときなどある程度仕方ない部分もある。
11月場所では上位総当たりの中13勝し、同点の成績を納めたが、中盤戦やや息切れする場面も見られた。
来場所も同等の成績を残せば大関復帰も十分可能だろう。
チャンスは何度も巡ってくるものではないため、一気に昇進を決めてほしいところである。
そして上記にも挙げた今年大関へ昇進した朝乃山、正代だが、貴景勝に負けじと大関在位にて優勝を果たせるかどうか。
朝乃山は二桁勝利する安定感はあるものの、爆発力は欠けており、四つの技術面においても両横綱だけでなく照ノ富士にも遠く及ばない。
左前ミツに拘り、右四つの完成度を向上させることが出来るかどうか。
正代は新大関だった11月場所にて途中休場という残念な結果だった。
まだ大関に在位して結果を残していないため、来年は存在感を見せて欲しいところ。
まだまだコロナウイルスにより、万全な稽古も積めない状態であり、さらには今後再び場所が中止になる可能性も高い。
問題なく開催されていくのならば、来年は今年以上に上位の顔触れに変化が見られるのではないだろうか。
上記に名を挙げた力士だけでなく、若手の台頭に期待である。