昨日貴景勝の優勝により幕を閉じた大相撲11月場所。
22場所ぶりの大関の優勝ということで話題にもなったが、貴景勝は初の年間最多勝も受賞した。
51勝は歴代最少白星であり、さらに次点である正代の48勝も次点成績の最少白星である。
年5場所といはいえ、過去にも記載した通り、3回目の年5場所による年間最多勝だったが、そこでも最少記録となっている(そもそも昨年朝乃山の55勝ですら過去の年5場所の成績に及ばなかった)。
とはいえ横綱の休場が続いている中、3大関が年間白星トップ3に入っているのは、最低限の責任を果たしたとも言えるのではないだろうか(3位は朝乃山、隆の勝が同率の45勝)。
ちなみに九州場所(11月場所)までに1年間で大関へ在位していた力士を大関と該当する。
そのため昨年春場所で関脇へ陥落した高安は、初場所は大関へ在位していたため、これも大関在位と該当する。
年間最多勝の受賞の制度は昭和32年からであり、昭和32年から令和2年まで計64年(64回)であるが、過去に同時受賞した年も存在するため、合計人数にばらつきが生じる。
そして大関の受賞者は今回の貴景勝を含め、上記の通り『10例』である。
やはり番付通りの結果であり、過去は横綱が最も多く、次いで大関だが、差は大きく生じている。
ちなみに今年で3年連続大関以下が年間最多勝を受賞する結果となっているが、これは『史上初』である。
そして今回気になったのが題名の通り『大関の年間最多勝&次点の同時受賞』についてである。
まず次点の内訳は以下の通りである。
年間最多勝同様、同点者が存在するため合計人数にばらつきが生じる。
そして次点に目を向けると、横綱よりも大関の方が人数が多い結果となっている。
この背景として『大関昇進場所が絡む』ことが挙げられる。
大関昇進のためには、概ね3場所33勝以上が求められるため、ここで合計成績が比較的上昇し、2横綱が在位していても1人休場が続いていると、大関が次点になるという場合が多い。
そして題名の通り、年間最多勝&次点が大関だったのは以下の通りである。
年代 |
年間最多勝受賞者 |
次点 |
昭和43年 |
玉乃島①(69勝21敗) |
北の富士(58勝32敗) 琴櫻①(58勝28敗4休) |
昭和44年 |
北の富士①(63勝27敗) |
玉乃島①(62勝28敗) |
昭和59年 |
若嶋津②(71勝19敗) |
朝潮(58勝32敗) 北天佑(58勝32敗) |
平成3年 |
霧島①(62勝28敗) |
小錦①(59勝17敗14休) |
平成14年 |
朝青龍①(66勝24敗) |
千代大海①(61勝23敗6休) |
令和2年 |
貴景勝①(51勝21敗3休) |
正代①(48勝17敗10休) |
※四股名は当時の四股名。また四股名の横の数字はその年の優勝回数。
今回を含め『6例目』である。
これを見ると『横綱の休場が多発している時期』という共通点がある。
まず昭和43年だが、第一人者大鵬が4場所連続休場となり、翌年も2場所休場している。
出場しては優勝を果たすことが多いが、大鵬の休場が徐々に目立ってきており、昭和45年には北の富士、玉乃島(横綱昇進後玉の海)が横綱へ昇進した。
昭和59年は第一人者千代の富士が2場所休場しており、この年は優勝を果たしたのも九州場所のみと、横綱昇進以降最も不振と言っても過言ではない年だった。
逆に大関若嶋津が全盛期を迎えており、全勝優勝を果たすなどの活躍で、最高位が大関としては歴代最高の白星数である。
ちなみに後に横綱へ昇進した力士で大関以下の歴代最高は貴乃花の80勝であり、同年にとらわれない最高位が大関の連続6場所の歴代最高白星は小錦の75勝である。
話が逸れたが、衰退したかに思われた千代の富士はこの年以降再び強さを取り戻し、逆に若嶋津はこの年を最後に衰退し、一時代を築くことができなかった。
平成3年は千代の富士、大乃国の引退、北勝海、旭富士も休場が続き、曙、貴乃花(当時貴花田)が台頭し始めた時代である。
平成14年は貴乃花が長期休場、武蔵丸が3場所制覇しているが2場所休場したため、この年大関へ昇進した朝青龍が年間最多勝を受賞し、随所で力を発揮していた千代大海が次点につけた。
またこの年の秋場所が貴乃花、武蔵丸にとって最後の皆勤場所となった。
そして今年は白鵬、鶴竜の休場が続いているため、このような結果となった。
千代の富士は別として、他の年の横綱は引退が近付いている時期でもあるため、このような現象が起きている。
また上記力士の中で、北の富士、玉乃島、琴櫻、朝青龍が横綱へ昇進しているため、貴景勝、正代も横綱の休場が続いている今がチャンスである。
ましてや白鵬、鶴竜ともに来年は進退を懸けることになるだろう。
貴景勝は来場所綱取り場所にてこのチャンスをモノにすることが出来るかどうか。
昇進には勢い、爆発力も重要だ。
今場所の勢いを持続できるかどうか。
正代そして上記に名前は挙がっていないが朝乃山、照ノ富士も今年勢いのあった力士だが、このチャンスをモノにすることが出来るかどうか。
若手の台頭が著しいと言われながらも、引導を渡すことが出来ていないため、来場所以降注目である。