十両に番付を落としており、今場所も全休で幕下陥落を確定させている嘉風が本日引退を表明した。
幕下に陥落しても復活を遂げてくれると願っていただけに残念な知らせだった。
デビュー当初は、アマチュア横綱となって幕下付け出しの権利を得ながら、有効期限の1年が経過して無効となり、タイトルホルダーとして初めて前相撲から初土俵を踏んだことで話題となった。
当時私は幕内に昇進してから嘉風の相撲を見て『機敏ではあるが、幕内中位で留まる力士』だと感じた。
言い換えれば、上位で相撲を取ることは2~3回程度だろうと思っていた。
実際、幕内中位~下位で相撲を取ることが多く、予想通りだと思っていた。
それが変化したのは2014年頃からだろうか。
日馬富士に度々土を付け、上位でも健闘する姿が見受けられるようになった。
そしてきっかけとなったのが2015年秋場所。
『嘉風フィーバー』と呼ばれるこの場所で2横綱2大関を破って11勝を挙げた。
この時33歳であったが、動きは全盛期を迎えており、スピードだけでなく、左を差してからの攻め、懐に入る巧さなどが光っていた。
ここから2年ほどは上位で活躍することも多く、上位にとって驚異であった。
『大関を目指す』と公言したこともあったが、その発言に対して笑う者は存在しないと言っても過言ではなかった。
嘉風の功績は何と言っても『30歳を過ぎてからでも全盛期を迎えた』ことにある。
この嘉風の活躍をきっかけに、角界でも30歳を過ぎてから活躍する力士が目立つようになった。
そして小兵力士にも希望を持ってもらえる相撲であったとも言える。
現役の炎鵬、照強ほどの小兵力士ではないが、決して大きいとは言えない身体にて上位で活躍した姿は素晴らしかった。
現在の大相撲に大きな影響を与えた力士の引退は本当に残念である。
嘉風関、お疲れ様でした。