前編では、大相撲の怪我の深刻化について記載した。
後編では公傷制度の『私案』を記載していきたいと思う。
まずおさらいとして、前提は
・長期休場への対策
・地位の確保
・収入面
・乱用されない工夫
この4点を踏まえた立案が以下の通りである。
①公傷は最大で『半年(3場所)』とする。
②公傷全休場所は『番付から除外』する。そのためこの間『在位数』に数えない。復帰してきた場所に、その休場前の場所と『同地位の張り出し』とする。
③復帰場所の負け越しの数(負け星-勝ち星)は、通常の『2倍』で計算する。
④公傷全休場所は『基本給』『給金』を支払わない。
⑤大関の場合、復帰場所を角番とする。
※且つここでも『私案』を適用したいため、詳細は 27. 大関に関する私案(後編)を参照していただきたい。
詳細を順に記載する。
まず①だが、最大半年(3場所)適応とすることで、長期休場へある程度の対策となる(怪我の度合いによってはこれでも足りないかもしれないが)。
平幕上位に在位する力士であれば、概ね幕内に留まる可能性も高くなる。
そして②、③、④だが、これは同時に話を進める。
まず以下に例を挙げる。
例)力士A:初場所時点で前頭2枚目。幕内在位数10場所。番付の変動は単純計算にて考えている。
初場所にて場所中に怪我をして途中休場となり、7勝6敗2休で場所を終えた。
→翌春場所前頭3枚目に降下し、ここで公傷適用することで、力士Aは番付から除外する。
→結果的に公傷を春場所~名古屋場所まで適用したため、その間給与の支払いはなく、幕内在位数は10場所のままである。
→秋場所に復帰し、この場所は『張り出し前頭3枚目』とし、結果6勝9敗で場所を終えた。負け越し数は本来3だが、③により6とする。
→九州場所の番付は6枚降下の前頭9枚目である。
①により長期休場の対策を立てても『休場した方が得』という考えに至ってはいけない。
『乱用されない工夫』が必要であり、そのため②~④のように収入面に大きく影響する形にした。
また在位数に関しては、在位数を数えないことで『親方株取得』影響を及ぼすことになる。
とはいえ欠点だけを並べては『地位を確保することが困難』になるため、②にも記載されているように、復帰してきた場所に、その休場前の場所と『同地位の張り出し』とすることとした。
そして③だが、怪我による長期休場という仕方ない面もあるが、最大で3場所の間『土俵上でパフォーマンスの発揮が出来ない』という、力士の本質に背く事実が生まれることになる。
そのため、復帰場所の負け越しに関しては厳しく考えるようにした。
⑤は上記の通り、過去の記載を参照していただきたいが、簡潔言えば『角番脱出は9勝以上』『8勝の場合、翌場所も角番』ということである。
大関の場合、単に『復帰場所を角番』とするならば、収入面のマイナスはあるものの、確実に『番付維持は可能』となるため、現状よりも甘い基準になる可能性も高い。
そのため私案を適応することで、単に番付維持を目的とするだけではなく、大関としての力量を少しでも取り戻すことにも繋がるのではないかと考える。
全体を通じて、この私案でも『休場の欠点』は比較的多い方だと思う(特に収入面)。
しかしこの私案でも十分に『休場して怪我を完治させる』という考え方の力士も生まれるのではないだろうか。
自身の状態を把握し、その上で公傷の条件を考慮し、自身の判断で出場か休場を考えることができるだろう。
またこの私案の最大の欠点は『怪我の度合いについての説明』が全くされていない点である。
収入面の関係で厳しくしても、旧来の公傷制度同様『やたらと全治2ヶ月の診断書が提出される』という事態が発生しては快くないだろう。
適度に用いることは良いが、乱用だけは避けなければならない(私としては乱用を避ける案にしているつもりだが)。
医学的な面において、公傷制度をどのように考えていくのか。
そこも大きな問題になっていくだろう。
今場所、貴景勝は全休という勇気ある決断を下したが、今後も期待の若手が貴景勝の二の舞いになってはいけない。
余談だがこの私案は、遠藤が負傷した平成27年春場所頃からぼんやりと考えていたことであり、近年の怪我の深刻化、さらには貴景勝が休場したことにより、具体的に文面に表記したいと考えた。
言い換えればぼんやりしている案を具現化するのに、1~2日あれば十分であった。
協会としても早急に考えていただきたいところである。