きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

92. 公傷制度について考える 前編

大相撲名古屋場所が終了して早1週間。

今場所の名古屋場所は、協会、ファンにとっても様々な点で考えさせられる場所になったのではないだろうか。

その中の1つが『怪我』『休場』に関する問題である。

以前 16. 協会よ。いい加減に考えるときだ。 でも記載したことがあるが、大相撲の怪我は深刻化しており、今場所も『史上初の4大関休場』という事態に陥った。

そしてこの問題において論じられることが『公傷制度の有無』に関してである。

公傷制度の復活に関して賛否両論あり、反対意見の多くが

『自己管理が出来ていない』

『稽古不足』

『過度な体重増加が問題』

という旨の内容である。

間違いなくこれらは事実だと思う。

 

相撲の基礎である四股、テッポウ、すり足を怠っている力士は怪我をしない身体作りも出来ていないことになるし、過度な体重増加も身体に負担をかける可能性が高くなる。

しかし全ての力士がこれに該当するかというとそうではない。

中には『土俵上の事故』とも呼べる怪我も多い。

今場所で言えば『高安』が土俵上の事故とも呼べる怪我だろう。

玉鷲戦で両者力を出している中で、腕が極まってしまう内容だった。

この一番を見て

『高安は稽古不足』

『自己管理が出来ていない』

という結論には至らないと思う。

 

公傷制度を否定するのは構わないが、上記の理由だけで安易に否定することは、ここ数年深刻化していることを考えても出来ないだろう。

上位に定着してきた力士、上位に迫ってきた力士が怪我で離脱する。

長期離脱した場合、照ノ富士や宇良のように『三段目まで下降』する。

現在、公傷制度が無いため、遠藤のように騙し騙し相撲を取り続ける力士も存在する。

今場所のように『4大関休場』といった、経済面を考慮すると休場されるのも困るが、そのまま出場して悪化させ、再起不能になるのはもっと困る。

今場所の貴景勝は危うくその道を辿る危険性もあった。

『出場することへの美学』を唱える者も存在するが、そのまま次々と力士が壊れてしまっては死活問題である。

 

『怪我をしない身体作り』

これは大前提として間違いないことだが、限界が来ているのである。

騙し騙し取り続けた結果、照ノ富士は長期離脱して三段目まで下降した。

昨年、栃ノ心が大怪我により幕下陥落を経験しながらも『初優勝&大関昇進』を果たし、再度怪我に苦しもながらも今年は『大関復帰』を果たした。

これは喜ばしく、素晴らしい出来事であり、怪我をした力士の鏡とも呼べる存在であるが、全力士が栃ノ心ではない。

この事実を正当化してはいけない。

正当化することで決して『真実』になる問題ではない。

具体案、解決案を模索しない限り、解決出来ない問題である。

 

今からでも遅いくらいである。

今も怪我にもがき苦しんでいる力士が多く存在する。

協会からはこの問題に向き合っている様子が全く見られない。

結局は『自己管理が出来ていない』『怪我をしないための身体作り』という曖昧な発言のみである。

貴景勝だけではない。

台頭してくる若手が、いつ離脱するかわからない。

自己管理というが、怪我を治す時間がほしい中、巡業の数はどんどん増していき、自己管理することが難しい環境にすらなっている。

自己管理を困難にさせているのは『協会そのもの』と言っても過言ではない。

 

話は公傷制度反対意見のことに関して戻るが、確かに公傷制度は『乱用される』危険性がある。

そもそも平成16年に廃止された背景には『公傷制度を乱用する』という理由も含まれていた。

 

そのため私の考えは『公傷制度には賛成だが、旧来の公傷制度の復活は反対』である。

旧来の公傷制度であれば『長期休場』に関してあまり対策が出来ないからである。

旧来の公傷制度は簡潔に言えば、本場所の土俵上で怪我をした力士は、翌場所全休でも番付を降下しないというものである。

例を挙げると

前頭2枚目:7勝7敗1休(土俵上の怪我により途中休場)

→前頭3枚目:全休(公傷)

→前頭3枚目:9勝6敗

といったような流れである。

そのため公傷が適用された全休場所の翌場所、仮に全休してしまえば単純計算でそのまま15枚降下となるわけである。

近年では大怪我による長期休場が目立つようになっている。

上記で挙がっている栃ノ心は、幕内下位から長期休場により幕下下位まで降下しているが、この場合例え旧来の公傷制度があったとしても、結局栃ノ心は星勘定からすると幕下からのスタートとなっていた。

 

そのため、まず前提として

・長期休場への対策

・地位の確保

・収入面

・乱用されない工夫

以上4点が必要になってくると考える。

 

後編では『私案』を記載していきたいと思う。

つづく。