きょうへいくんの大相撲日記

幼少期より大相撲を愛し、勝手に語ります。

84. 安美錦という力士

本日、安美錦が引退を表明し、23年間の土俵生活に別れを告げた。

今場所2日目に古傷の右膝を負傷し、それでも再出場するという話も聞いていたため、非常に驚かされた。

近年の大相撲で『くせ者』と言えば安美錦を思い浮かべるファンも多かっただろう。

関取在位117場所は歴代1位タイ、金星8個と三賞12個は現役1位であり、記憶にも記録にも残る名力士であった。

新入幕は丁度19年前の名古屋場所であり、その場所は10勝を果たして敢闘賞を受賞した。

このとき私は小学生だったが、正直私はこのときの安美錦の印象として『小兵力士として前半戦を盛り上げる力士』という程度だった。

現にその2場所後には1勝14敗の大敗を喫している。

安美錦を語る上で欠かせないことは2003年初場所の『貴乃花最後の対戦相手』ということだが、このときも最終的には4勝11敗と上位に対してまるで歯が立たなかった。

そして当時から膝の怪我には苦しんでおり、長くても30歳くらいで引退するだろうと考えていたし、上位で活躍する姿など全く想像できなかった。

それが『小兵力士の宿命』とも考えていた。

しかし身体はどんどん大きくなり、もはや小兵力士と呼べる身体ではなくなり、そして2007年夏場所朝青龍に完勝した辺りから、完全に上位へ定着するようになった。

朝青龍からの金星は4個挙げているが、朝青龍が最も金星を配給した力士である。

琴欧洲安美錦を大の苦手としており、安美錦に苦戦する力士は多く存在した。

小兵力士として磨いた技のキレに加え、身体が大きくなったことにより、前に出る力もついた。

解説者の中には『膝の怪我さえなければ大関になっていた』と発言する者もいた。

それに関して私は『さすがにそれはない』と考えている。

上記の通り、金星数、三賞数から考えても実力者であることは間違いないのだが、三役での勝ち越しは15場所中5場所に留まる。

要は『関脇以下だから喜ばれる成績・結果』だったのである。

膝の怪我がなくても、さすがに上を目指す力量は厳しかったのではないだろうか。

安美錦という力士は、大関を目指す強さではなく、何かしてくれるのではないかという『期待を持てる力士』であったと言える。

白鵬全盛期の時代でも『安美錦なら』という期待が多く持てた。

その結果、白鵬が完勝しても『仕方ない』の一言で済む力士だった。

上記の通り『くせ者』という言葉が最も似合う力士と言っても過言ではなかった。

小兵力士時代の技のキレ、朝青龍白鵬のモンゴル2強横綱の全盛期を戦い抜いた経験、そして常に考えながら相撲を取る姿勢は、後輩力士達にとって学ぶべき点が多いだろう。

ただ身体を大きくすれば良いのではない。

身に付けるものをしっかりと身に付ける必要性があることを教えてくれた。

再び復活してくれることも期待していたが、さすがに限界だったようである。

当初の私の予想からすれば、40歳まで現役でいたこと自体が奇跡だと考えているが、ここ数年の安美錦を考えると残念である。

親方として後進の指導にあたるだろうが、ぜひその技術を存分に伝えていってほしいところである。

安美錦関。
23年間本当にお疲れ様でした。