『栃ノ心ー朝乃山』
土俵際で栃ノ心のすくい投げからの突き落としが決まる。
軍配は栃ノ心に上がる。
その瞬間、私は物言いがつく可能性があると感じた。
その理由は『髷掴み』である。
VTRで確認すると、首根っこを押さえつけるようにすくい投げを打ち、最終的には頭を押さえつける形で突き落としを完全に決めた。
髷を掴む、引っ張るといった行為は見られないように感じた。
実況と解説が『右の踵』について触れていたが、そこは大した問題ではないだろうと考えていた。
そして一昨日同様、物言いは長考。
そこまで長考する必要はないだろうと少し苛立ちも覚えた。
5分以上の協議の結果、『栃ノ心の踵が土俵を割っていた』という理由で軍配差し違いにより朝乃山の勝ちとなった。
一昨日同様、阿武松審判は『栃ノ心の踵が出ており、差し違いで西方の勝ち』という四股名を忘れ、さらには東西を間違えるという失態をおかしているわけだが。
本来ならば物言いの説明後、観客は大きな歓声をあげることが多い。
それが説明後とは思えないほど静けさが漂った。
ファンはもちろんのこと、栃ノ心本人が一番驚いただろう。
私から言わせてみれば『誤審』である。
しかも両者にとって重要な一番で。
大相撲だけに限らず、スポーツ界において誤審は時々見られるものである。
しかし上記の通り、両者にとって重要な一番、一昨日の朝乃山が勝ちならばという考え方、そして極めつきは『審判部の取り組み編成』だろう。
全ての怒りがこの一番をきっかけにして爆発してしまったファンも多いのではないだろうか。
『令和最初の場所』がこんな形で歴史的な場所になるのか。
複雑な思いである。
まぁ愚痴などはここまでにしておこう。
相撲内容を振り返ると、朝乃山の完勝だった。
左前ミツを引き、一気に走った。
栃ノ心は立ち合いから腰高だったが、右を辛うじて差していたため、朝乃山の左の引き付けが甘いことも相まって、すくい投げが決まったように見えた。
執念も感じたが、それも及ばなかった。
内容は悪かった。
そして運にも見放された。
残りの対戦相手は14日目の鶴竜は確定しており、千秋楽は『鶴竜ー朝乃山』の割が組まれない限り、高安で決まりだろう。
一度は軍配をもらいながらも差し違いとなり、天国から地獄へ突き落とされた今、相撲内容の修正など無理だろう。
あまり精神論を語りたくないが、残り2日間は『精神力』が試されると思う。
あと1勝。
栃ノ心の精神力はどうか。
そして優勝争いだが、再び平幕朝乃山が単独トップに立った。
鶴竜は4連敗中の高安相手に不覚。
立ち合い踏み込み良く、左前ミツは切られたものの、下から攻める鶴竜の流れだった。
しかし土俵際で高安のいなしに大きく泳いでしまった。
内容では圧倒していただけに、かなり痛手となる黒星である。
この黒星により、現段階では自力優勝も難しい立場にある。
朝乃山と千秋楽に割が組まれる可能性も0ではないが、ほぼないと言っても過言ではないだろう。
とにもかくにも、逆転優勝のためには一つも落とすわけにはいかない。
明日の注目は
『豪栄道ー朝乃山』
『鶴竜ー栃ノ心』
この2番だろう。
ここで豪栄道と割を組むならば、12日目に組めば良かっただろうと思うが、まぁそれは置いておこうか(その旨については62と63を参照)。
今場所の豪栄道は序盤戦張り差しが目立っていたが、中盤戦以降はもろ差し狙いの立ち合いが大半であった。
明日は左前ミツ狙いかもろ差し狙いか。
どちらにせよ相撲の巧さでは豪栄道の方が遥かに上である。
相四つであっても、右四つの完成度も豪栄道の方が上だ。
朝乃山としては、本日の取り組みのように攻める気持ちが大切である。
再び単独トップに立ち、固くならず自分の相撲を取ることが出来るかどうか。
優勝への執念が勝るのか、それとも大関復帰への執念が勝るのか。
残り2日。
優勝争いも佳境を迎える。
そして栃ノ心の大関復帰はどうなるのか。
はてさて…