前編では過去の事例を振り返った。
中編ではその事例などを踏まえた上で、『大関昇進に関する私案』を記載していきたいと思う。
さっそくだが、私案は以下の通りである。
【①もしくは②の基準を満たした場合、大関へ推挙する。
①原則関脇または小結で3場所の勝ち星合計が33勝以上かつ2場所以上連続二桁勝利を必要とする。
但し、出場している横綱・大関・関脇・小結と総当たりの上位圏内に位置する平幕力士が、11勝以上の成績ならばこれを計算に入れても良い。
また3場所間に負け越しを喫した場合、これに当たらない。
②関脇または小結に在位し、6場所合計60勝以上かつ2場所以上連続二桁勝利を必要とする。但し、負け越し場所がある場合これに当たらない。また6場所間は必ず関脇・小結に在位していなくてはならない。】
まず①に関してだが、やはり明確な数字を提示した方が批判を減少させることが出来ると考えたため『33勝以上』と設けた。
そして重要な点が『2場所以上連続二桁勝利を必要とする』である。
大関へ昇進するためには大勝するための『爆発力』は不可欠であるが、昇進後を加味した場合『安定感』も求められる地位である。
そのため2場所連続二桁勝利経験のない力士が大関へ昇進となっても『この力士は安定感がないから』と不安にさせる可能性が高い。
現に豪栄道は昨日も記載した通り、安定感とは程遠い成績である。
後に横綱へ昇進した曙は
13勝(次)→8勝→13勝(優)
と極端な成績で昇進しているが、私案ではこれを昇進に値しない(正直13勝が2場所の優勝1場所は悩ましい所だが)。
そして上位圏内における平幕の成績だが、上位圏内いわゆる上位総当たりの好成績は十分評価に値すると考えた。
近いところで言えば栃ノ心である。
14(優)→10→13(次)で、合計は過去最多タイとなる37勝であり、優勝を果たした場所は平幕だったが、上位総当たりであった。
そのため、栃ノ心の大関昇進に対して批判する声は聞いたことがない。
なぜ11勝以上に設定したかというと、やはりそこは平幕ということでギリギリ二桁に到達する10勝よりも基準を厳しくする形とした。
ちなみに最高位大関は1958年以降、現役力士を含め34名だが、その内33勝未満は以下の通り8名である。
千代大海(32勝):9→10→13(優)
稀勢の里(32勝):10→12→10
豪栄道(32勝):12→8→12
清國(31勝):10→9→12
増位山(31勝):8→11→12
琴風(31勝):9→10→12(優)
若羽黒(30勝)→7→11→12
魁傑(30勝)→7→12(優)→11
北葉山(28勝)8→9→11
※魁傑は1回目昇進時の成績
時代背景があるとはいえ、やはり31勝以下は貴景勝、御嶽海が文句を言っても不思議ではない成績である。
昨日も記載したが、負け越し場所があること自体昇進に値しないだろう。
また後の横綱北の富士も
8→10→10と現在では考えられないほどの低成績で昇進している。
やはり明確な数字を提示した方が良いと考えられる。
そして②だが『年単位での安定感』を考えての私案である。
いわゆる『10勝平均』となり、①より簡単に思うかもしれないが、負け越しなし、そして平幕の成績を考慮しないという点ではある意味①より難しいと考えている。
この私案があると仮定して、歴代の大相撲力士の中でこの基準を満たして昇進できる力士は魁皇だけである。
厳密に言えば、武蔵丸や日馬富士(当時安馬)も基準を満たしているが、要はこの2名の場合、大関取りを成功させている3場所の合計も含めているのである。
そのため、②の基準だけを満たしているのは魁皇だけである。
19場所連続関脇・小結在位で1位の記録を保持する若の里、14場所連続関脇在位で1位の豪栄道も負け越しを喫している。
現役力士で言えば御嶽海が上記2名に近い存在だが、御嶽海も三役在位連続13場所だが、負け越しを喫している。
そのため①、②は多少の差はあれど、難易度に大きな差はないと考える。
ここで以下の例を挙げる。
・力士A:12・10・10・11・10
・力士B:12・6・9・14・8
両者は直前3場所に限れば合計31勝と同じである。
『爆発力』で言えば14勝を挙げている力士Bの方だが、安定感は雲泥の差と言える。
両者ともにこの直後に12勝を挙げた場合、力士Aの方は昇進に疑問を抱く者も少ないだろうが、力士Bの場合は『勢い』を買われての昇進になる可能性が高く、批判の声も聞かれる可能性が高い。
それだけ昇進直前の『連続二桁勝利』というのは重要な役割を担っていると考える。
後編へ続く