先日、苦労人 玉鷲が初優勝を果たして幕を閉じた2019年大相撲初場所。
場所前は稀勢の里の進退、貴景勝の大関取りが大きな話題となっていた。
そして優勝争い展望の際、必ず名前の挙がる力士が第一人者 白鵬である。
ここ10年近く、大相撲の優勝争いに関して白鵬抜きでは語ることができない。
良くも悪くも土俵を支配しているのが白鵬である。
それは休場していてもそうである。
昨年御嶽海、貴景勝と日本出身力士の若手力士が初優勝を果たしたが、その場所はいずれも白鵬が存在しなかった。
そのため不運なことに御嶽海、貴景勝の優勝には『ケチ』がつきやすいものになっていた。
今場所は休場明けの不安もあり、序盤戦は危ない相撲が続いたが、中盤戦は完璧な内容だった。
『さすが白鵬』と思う反面『本当の世代交代はまだまだ先』と思わせる展開であった。
しかしそこから3連敗。
初黒星を喫した御嶽海戦は、再出場の相手に対してやや不安なども感じたなどで説明がつくが、その後の連敗は白鵬らしさが見られなかった。
玉鷲戦のように離れた展開になると雑な張り手を繰り出すといった、近年だけで言うならば白鵬らしさと言えるかもしれないが。
昨年は6場所中、皆勤は2場所に留まり、優勝は秋場所の全勝優勝1回だけである。
白鵬が横綱になってから初めて休場したのは2015年秋場所である。
これ以前は怪我にも強く、また朝青龍が引退した後、2010年春場所から白鵬が休場する前の2015年名古屋場所まで全32場所中、優勝23回、優勝次点8回とほぼ全ての場所で優勝争いを演じていた。
ちなみに余談だが、唯一優勝次点も逃した2012年夏場所は、10勝で終わっている。
やはり白鵬不振の影響が大きすぎたためか『史上初の平幕同士の優勝決定戦』となり、その結果旭天鵬が優勝を果たしている。
そして2015年秋場所以降、今場所まで全21場所中、優勝6回と減少している。
そしてある意味深刻であるのが、優勝次点は2回に留まり、休場は8場所となっていることである。
優勝次点に関しては2016年初場所が最後である。
かつて優勝争いを必ず演じていた力士が、皆勤しても11勝程度に留まる、もしくは休場で不在という場所が増えてきているのである。
昨年からの7場所で4名が初優勝を果たしているが、その背景はここらにあるとも考えられる。
数字だけを見る限りでは『衰退している』と言われても仕方がない。
当たり前の事だが、加齢による力量の衰えは誰しも避けられない道である。
年齢を重ねて力量が衰えようとも優勝するときは優勝し、また崩れても二桁勝つ力量は立派という考え方もできる。
しかし大相撲ファンの多くが『最強白鵬』『第一人者 白鵬』を望んでいる。
数字上の衰えは見えても、昨年秋場所の全勝優勝や今場所中盤戦までの白鵬の相撲を見てもわかるが、相撲の質、安定感は他の力士とは比較にならないレベルである。
『立ち合いの踏み込み』
『右四つの安定感』
『廻しを切る技術』
『瞬時の判断』
この辺り徐々に衰えが見えるとはいえ、本当に群を抜いている。
結局大相撲ファンの中では『強い白鵬』という認識のままである。
常に第一人者として君臨し、若手の壁として立ちはだかってほしい。
その上で次世代を切り開く力士が白鵬を越えてほしい。
この時代に白鵬がいることは、ファンにとっても対戦相手の力士にとっても素晴らしいことである。
ここ数年、私の大相撲観戦の仕方は『誰が優勝するか?』を楽しむのでなく『誰が白鵬を倒すのか?』に焦点を当てて楽しんでいた。
しかし昨年からそれが徐々に薄れつつあるため寂しい気持ちである。
現状、若手力士の台頭は著しくなったが、どちらかと言えば『白鵬衰退』による相対的な面の方が大きい。
かつて丈夫な身体であった白鵬も、泣き所となっている足指など満身創痍であることはわかっている。
しかしまだまだ強い白鵬でいてもらいたい。
いや、いてもらわなければ困る。
来場所以降の巻き返しを期待したい。